2006年4月アーカイブ

昨今、人事制度を改定している企業は非常に多く、我々のところにもこの種のサポート依頼はことの他多い。
流れは当然のことながら成果主義であるが、人事制度改定の背景にあるのは、

①経済環境の変化
成熟市場の中で若年層の減少、労働人口の平均年齢は高齢化する等、就労者構造の変化であり、これにより、従来の単純な年功型賃金制度ではその維持が困難な状況となっている。

②競争構造の変化
売り手主導から完全に買い手主導となり各企業とも競争力の源泉をどのように作り出すかということが非常に重要な要因となってきた。売り手主導の時代に優秀とされた能力と買い手主導の時代に優能とされる能力は必然的に異なる。買い手主導の時代は、新しい知恵や考え方を生み出せる人材、そしてそれを関連部門や社外の人たちを巻き込んで動かしていける人材の価値が高い。このような能力は必ずしも経験や年次に比例しない。このために、企業にとってより貢献度の高い人材を厚く処遇し、力を発揮できる環境が必要となる。

③働く個人の価値観の変化
経験や年次こだわらず、能力や成果に応じた処遇が公平であるという考え方が体勢となってきている。
また、経済的な安定だけでなく、やりがいや自分らしさの追及を仕事に求めるようになってきた。

人事制度の改定を意図している企業に"これからの競争環境の中で御社が必要とする人材像は"と人事部門に質問しても"リーダーシップがとれる"とか"これまでのやり方に捉われない"等といった極めて抽象的な内容のものしかかえってこないというのが実態である。要は、自社の競争環境を前提に必要となる人財像を描けてないのである。

事業戦略と同様、人事制度にも独自性という視点が必要であるにもかかわらず、これが欠如しているため我が社の競争力に結びつく独自の人事制度には全くいきつかない。

人事制度が改定されると当然、評価制度も変わる。評価制度が変更されると、通常は、評価スキルを上げるために評価者トレーニングなるものが実施される。

評価者トレーニングの進め方やトレーニング場面にもその企業の組織体質や企業風土が如実に表われてくる。

組織体質が革新的な企業ほど、現場や下位層に新しい制度を強いる場合、その納得感を高めるためにまず上位者からトレーニングを体験して下位層に範を示すことをするが、保守的で閉鎖性の強い企業ほど下位の階層から実施し、上位の階層に進んでいくものの、上位層になればなるほど、トレーニング体験への心理的な抵抗が強い。

"評価者トレーニングなんて体験しなくてもわかっている""なんで自分たちがこの手のものを受講しなくてはならないのか"等といった反応が研修場面で多くでてくるのもこの手の企業の特徴である。

これに対して、事務局である人事部門の対応は、人事制度改定の事務局として、組織変革のためにこの手の上位階層の人たちのパラダイムと戦うということをせず、どちらかというと、外部の講師の現場対応力に依存しがちである。"いかに穏便にその場を収拾するか"といった姿勢であるために、"人事制度の改定による新しい評価システム"そのものが上位階層に十分理解されないままに終わってしまうということと、上述の如き言動を正当化させてしまい、人事制度改定の本来の目的である組織変革や企業風土変革等は全く覚束ない。

この上位階層の言動や理解のレベルは、企業全体に2つのリスクを生じさせる。
ひとつは、組織全体に新しい人事制度や評価システムが、その目的どおり理解、浸透しないであろうし、ポジティブには受けとめられない。
もうひとつは、上位階層がこのレベルではいかなる評価システムも十分に機能せず、評価スキルに対する社員の不満が増大することは疑うべくもない。

ここでは、いかなる人財教育も効を奏さないのである。


*続きはこちらにどうぞ。 
  【人財教育現場で思うこと】③

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