2010年5月アーカイブ

今回の現場ドキュメントは、課長職を対象に「自己のマネジメントを客観視する」

というテーマで実施したトレーニングをご紹介します。

 

【目的と導入背景】 

 

このトレーニングでは、周囲からのアンケートを題材に、自己の主観的な評価

ではなく、普段関わっている上司・部下からの客観的な見方をもとに、自己の

マネジメントが組織やそのパフォーマンスに与える影響を明らかにすること、そして、

改善に向けて、取り組むべき変革ポイントを明確にすることを目的としています。

 

実施された企業様では、以前から外部団体のツールを使って、360度サーベイを

用いた研修を内部で実施していましたが、「成果に結びついているかどうか疑問」

という、御相談がありました。

 

打ち合わせの段階で、次のような問題点を共有し、クリアした上でトレーニングの

実施に至りました。

 

●測定する基準が不明瞭
・外部団体が設けた画一的な基準や、リーダーシップ論で述べられている様な、
 抽象的な基準で測定しているため、「我が社が求める管理職」という 
 基準から充足すべき点が見えてこない。
※そこで、協議を重ねた上で我が社が求める課長職像(コンピテンシー)に基づいて、
 評価をとる。また、数値的な評価だけでなく、より現実を映し出すために

フリーコメントをとる。

 

●介入するファシリテーター(トレーナー)
・今までは介入する人間がオペレーションに留まっていた。マネジメントの豊富な

経験やビジネスマン教育を手掛けた経験がない。また、「大人がどうすれば学ぶか」

「人がどうすれば変わるか」等と言う事を体系的、知覚的に理解していない。

 

【トレーニングから学んだこと】

 

全体の傾向としては、業務遂行能力は自他共に高い評価で一致している一方で、

組織全体に対する影響力、また、部署を超えた組織横断的な取組み、全社的な

対応と言う点では、特に部下の方々から相対的に低い結果が出ていました。

 

また、トレーニングを実施する中で、自己認知(普段、自分が思っている自己の

在り様)と、他者認知(周囲から見える自分)の間にギャップを感じると、参加者

からは、自己を正当化するような言動が多々みられました。

 

「部下が育たないので、仕事を任せられない」
「自分も業務に追われている状況」
「上位層から降りてくるのは数値目標だけで、具体的な指示は出てこない」
「そもそも変化する外部環境に会社の構造自体、対応しきれていない」等々...

 

このトレーニングを通じて学んだことは、二つあります。

 

一点目は、自己の現状をまずは認識する重要性です。
自分はやっているつもり...、という「つもりの自分」ではなく、周囲から見える自分を

受け止め、見たくない事も含めて、"何が不足しているか"を認識する重要性です。

 

自分の胸に手を当てて考えてみても、周囲の見方と自分との認識に違いがあれば
「そうは言っても...」と、ついつい現実を回避してしまいがちです。

 

これは一見、正論の様ですが、これでは前進しません。
まずは、「自身の問題」と一旦受け止めて、内省を深めない限り、成長への活路は

見えてこない様に感じました。

 

また、もう一点は、「これは課長職個人だけの問題なのだろうか」と言うことです。
浮かび上がった問題の背景を読み解き、解決に向けては、組織的にも取り組む

必要性があるのでは、と思うのです。

 

トレーニングを通じて浮かび上がった課題は、課長職当人が及ぼす影響も大きい

ですが、この様な現状を生み出してしまった背景や要因を、会社側としても真摯に

受け止める必要性がある様に思います。

 

2,3日のトレーニングだけで、人が変わる事はありません。
また、例え変わったとしても、職場に戻れば、職場の現実があり、ここが変わらない

限り、参加者は時間とともに、従前のスタイルに立ち戻ってしまいます。

 

トレーニングを契機に、組織的に事態を改善していく姿勢が重要だと思います。
しかしながら、日々、様々な企業を御伺いする中で感じる事は、
「研修を実施する」ことで終えてしまっていること、
また、特定の層、個人に問題があるという前提が常態化していることです。

 

客観視の重要性-

 

参加者が自身の現実と向き合う事もさることながら、
人財開発等の企画側をはじめ、会社側が、自社の構造を客観的に認識する事が、
真に実効をあげる上で、求められていく様に思いました。

新入社員が入社して、約1ヶ月が経ちました。
今回の現場ドキュメントは、新入社員教育を受けた受講者達のその後について

レポートいたします。

 

新人社員教育で学ぶことはそう多くはありません。
前回の現場ドキュメントでもあったように、
①ビジネスには、正解がない
②人間関係を選べない
③自分を知る
など、"知らないことを知る"と言うことに力を注ぎます。

 

それと、同様に一番力を入れているのが『挨拶』です。

 

新入社員が即戦力になりうることはまずありません。
そういった中で、挨拶は自分に何ができるかを考えるきっかけになります。

 

挨拶を行ってみての受講者の感想は
・初めは恥ずかしかったが、きちんと挨拶が出来ていない自分の方が恥ずかしい

 ことに気付いた。
・挨拶がコミュニケーションと取るうえで重要だということに気付いた。
・何度も繰り返し行うことによって、自信がつき、自然に できるようになった。

などの感想があがりました。

 

また、トレーニングを見学に来られていた経営者の方からは
『昨年の新入社員が数十名いる中で、今でも挨拶が出来ている社員は一人しか

いない。そして、その社員は挨拶と比例して仕事に関しても一番成長を感じる。

今回のみなさん(新入社員)をみて、改めて挨拶の重要さを実感した』

と話され、最後には受講者と一緒になって挨拶の練習に参加されました。

 

しかし、入社して数ヵ月、もしくは数週間でせっかく身に付いた挨拶が行われなく

なってしまうことは多々あります。

 

配属先の職場があまり挨拶をしない。現場では行われていない。
一番の理由はここにあると思います。

 

新入社員が入ってくる、と言うことは既存の社員にとって挨拶を含め、今一度自身を

見直すチャンスの時期だと思います。

 

今回のトレーニングを通じ
受け手側(企業)の問題としては、新入社員は配属された職場の色に染まってしまう

といいうこと。
たとえ新入社員教育を受けても、職場の影響によって大いに人財は変わってきます。
受け手側は、そのことを再度認識し直すことが重要になるかと思います。

 

今回、トレーニングを受けた企業では
新入社員が中心となり積極的に挨拶を行っています。
また経営者の方も、決めたことを、決めた通りに行うということに対して挨拶は目に

見えて分かりやすい一つの例だと考え、再度全社員に挨拶の徹底を伝えている

そうです。

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