2011年5月アーカイブ

前回に引き続き、今回は台湾のユニークな企業をレポートいたします。

台湾における高級ステーキレストランの代表的存在となっている『王品集団』。
創業1993年で、2010年グループチェーン全体の売上高は70億元(約206億円)、
従業員数は約6000人。
ステーキの他に日本料理などを手がけ、合計9つのブランドを有する。
店舗数は161店(台湾129店舗、中国32店舗)。

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2009年における他社との売り上げの比較は(台湾国内のみの店舗数と売上)
1位 王品集団   52.8億元 (155億円)   94店舗 
2位 争鮮       37.5億元 (110億円) 220店舗 
3位 統一星巴克 35.6億元 (104億円) 221店舗

サービス・売上ともに、台湾各界及び有名雑誌による評価で第1位の栄誉に
輝いている王品とは一体どんな企業なのか。

1.教育・制度
前号でもお伝えした通り、転職が多い台湾では、2010年新卒の離職率は45%に達し、
転職を考えている人は約7割に達する。しかし、王品の離職率はここ数年ずっと5%
以下を維持しており、人財教育に力を入れない企業が殆どの中、王品では教育を通して、
従業員に在るべき姿を学ばせ、従業員一人ひとりが、生き生きとその能力を発揮できる
ような場を与えている。

実際の教育として、王品には「王品大学」という教育制度が設けられ、
レストラン(現場)の実践=マナー研修、お店の基本運営などの教育がある。

王品にとって最も大事なのは、従業員の努力を尊敬すること。
従業員の行為を認め、意見を聞き、そして、それらに合わせ、会社の制度を修正するの
である。こうした中では、従業員はもっと努力したいという気持がちが湧き、会社が活性
化すると考えられる。

また、管理職(店長に昇進すると管理職となる)目を世界に向けるため、
『社外に飛び出せ(1年間に4回旅行に行け)』『人生の中で100国に行け』『100山登れ』
『毎年100レストラン回れ』などの目標が言い渡され、会社として評価の対象になる。

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2.企業の行動指針
王品では「王品憲法」というルールがある。

「王品憲法」の中には「従業員の遅刻に対して罰金を課す」という内容があり、これら
のルールは従業員の権利を守るために制定されている。
王品の最高経営責任者、戴(ダイ)社長は会議の時間を間違って、2時間遅刻したこ
とがあり、会議室に着いた時に、みんなに向って謝った後、すぐに罰金を納ったという。
『社内は平等』、最高経営責任者である戴もルールを守らなければならないということ
なのである。

また、「王品憲法」の中には「従業員の親族が会社に入いることを禁ずる」という内容
も含まれている。これは戴が、王品の経営を長く継続されるために制定したルールで、
「王品は私一人の会社ではなく、みんなの会社である」という考えのもとにある。

そのほかに、「家族の間には秘密なし」という考えに基づき、戴社長は会社の経営の
透明化を強調し、財務情報を公開して、従業員の誰でも見えるようにしている。


3.まとめ
このように、王品では従業員のために、多くの制度を制定し、人財を育てる文化の
ない台湾にあって、人財の教育や従業員の幸せを意識したルールを作り、業績を
伸ばしてきた。

王品を見ると企業は誰のものなのか?を今一度考えるいい機会になる。
企業とは「資本の結合体と同時に働く人達の結合体」という2面性を有する。
これは、カネがなければ事業は出来ないと同時に、人がいなければ仕事はできない
という意味である。
しかし、もとをただせば、長期的にその企業にコミットする人達がいなければ組織
として継続できないのである。

つまり、企業が生き残る道は「人財の育成・人財の権限を尊重する」ことと王品では
考えているのである。

限られた資源の中で、新たな商品・サービスを生み出すのは現場をよく知る社員と
なりうる。この考えは、どの企業にもいえる事柄であろう。

そのためには、経営層は質の高い従業員の獲得を再度考える必要があるのかも
しれない。
それには、人財を育成と会社に対するロイヤルティを高めることが重要になってくる。

現在我が社では、台湾から日本の文化を学ぶために、昨年の5月より来日している
女性が在籍しております。

そのため今回の現場ドキュメントでは、日本を飛び出し、海外(台湾)の教育事情に
ついてレポートしたいと思います。

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■背景

2010年の経済成長率は、09年度のマイナス1.93%から10.82%と24年ぶりの高い成長
であった。(過去30年間の経済成長率は8%の水準で推移。)中国に比べると劣るが、
日本や欧米に比べれば高い水準である。
台湾の主力産業は、半導体を初めとするIT関連部品の生産。パソコンの基盤(マザー
ボード)や液晶ディスプレイなどで、生産高世界一を誇っている。
しかし、高成長を続けている台湾経済だが、実は大きな弱点も抱えている。
台湾の国土は日本の九州程度で資源に乏しく、人口も約2300万人なので内需も期待は
できない。これまでは安い労働コストを武器にIT・半導体関連の生産で稼いでいたが、
将来的にはより安い労働力の国々(例えばベトナム・フィリピン・インドなど)に生産拠点を
移され、シェアを奪われる可能性は否定できない。(BRICs辞典より)


そんな中、2009年台湾国内の中小企業は123万社を超え、全体企業の97.7%
(日本の中小企業の割合は99.7%)を占めている。

その中小企業はというと同族経営、経営者のワンマン体質といった特徴もあるが、
人財が企業に定着しないという。

人財が定着しない理由として挙げられるのは、
① 生産製造方面では、経済規模が小さく、設備も不足で、原材料の価格変動の
  影響を受けやすい。
② 研究開発方面では、人手が足りなく、また資金不足に陥っている
③ IT産業は景気に大きく左右される業種で、収益が安定しない

こういった点からも、中小企業の経営が不安定に陥りやすく、社員への保障が
されておらず、社員が長い期間一つの企業にとどまるということはなく、
すぐに退職してしまう傾向にある。そのため、企業が人財へ教育をするということが
あまり行われていない。(教育をしても、転職をされてしまう恐れがあるため)

そのため、企業では日本のように1から育てるという意識はあまり無く、
雇用時に重視している点は即戦力と経験となっている。

会社が社員に勉強して欲しい領域としては
1.専門技術(83.6%) 
2.マネジメント(55.0%)
3.コンピュータースキル(41.5%)   ※複数回答可

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初めの台湾の背景でも述べたが、世界のノートパソコンの多くが台湾で受注生産・
組み立てされている。そのため、世界のITの景気に大きく左右される業種で、収益が
安定しないことも問題となる。
そこで、現在では台湾独自のブランド製品の開発にも力を入れている。
そのメーカーがASUS(アスース)やACER(エイサー)などである。

上記のことからいえることは、個人は企業での経験を活かし、自身で自ら学ぶという
ことが重要になってくる。
そして、企業ではいつまでも下請けでは生き残れないという危機感から、今まで培って
きた技術力を活かし、新たな価値を築きあげていくという仕組み成り立ってくる。

今まで、恵まれた環境下にいた日本。
教育や仕事は常に会社から与えられ、それをこなしていくという受身の体制になって
いないだろうか。
特に、教育というのは企業が社員への投資として莫大な費用を費やしている。
こういった台湾の企業の体質からも今後企業での自身のあり方を学ぶべきなのでは
ないだろうか。


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