長い間、取引のあったメインクライアントから契約が打ち切られている。
かつての成功体験を捨て、社員には新しい仕事の仕方に切り替えてほしい。
ある電子部品商社の人事部長の問題意識から、
課長職を対象にした「収益力向上プロジェクト」がスタート。
今回の現場ドキュメントでは同プロジェクトのワンセッションをご紹介します。
◆ 重要なのは推進する人の意識と考え方
プロジェクトでは最終的に改革案を創り上げますが、
前段~中盤では主に考え方・意識の転換に集中しました。
改革案の実効を上げるためには、それを推進していく社員の意識や
考え方の転換が最も重要になるためです。
その為にはまず、居心地の良い状況、安住できる環境から、
引っ張り出すことが必要となります。
それがない中で、いくら戦略やマーケティングに関する知識を
インプットしようとしても、頭には入らず、
でき上がった改革案も形骸化してしまいがちです。
《改革案》 ← 適合しなければ ← 《社員の考え方・意識》
・ 付加価値の最大化 「絵に描いた餅」 ・ そうはいっても日々の数字
・ ソリューションの実現 ・ 当面は今のままでも通用する
・・・ ・・・
◆ 現実を直視する
今回、題材のひとつとして使ったのは取引企業からの「ヒアリング調査結果」。
<調査結果より>
口 経営陣からは最近、特にコストダウンが求められている。よくやってくれる、
長い間の付き合い、といった温情主義ではもう、取引はできない。
長い間の付き合い、といった温情主義ではもう、取引はできない。
口 外部に丸投げ状態だったが、いまではメーカーと直接やりとりできる
領域が増えつつある。自社にノウハウが蓄積される分、メリットも多きい。
領域が増えつつある。自社にノウハウが蓄積される分、メリットも多きい。
口 新興国企業の参入で、「この価格で」という心理的な基準ができている。
今後は余程、付加価値がない限りコストで選ぶだろう。
今後は余程、付加価値がない限りコストで選ぶだろう。
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実は同社では今までに何度も「顧客満足度調査」を実施していましたが、
・現場には通達のみで終わっている
・客観的に納得させられる人財が社内に不在
等という背景から「落とし込みが不十分」という問題がありました。
調査結果を題材に、トレーナーと議論を繰り返す中で、
受講者の表情にも焦りが出てきます。
・「毎日、忙しい」状況に満足してしまっていた
・「案件をさばくこと」が自分の仕事だと思っていた
・技術の話はしても「我が社の付加価値」の話はメンバーと全くしていない
・目先の案件受注に走って、採算性を度外視していた。
このやり方で力を入れ続けても会社全体にとってはマイナス。
《調査結果》← (逃避・建前) ← 《社員》
「現実は違うんですよ」
「わかってはいますが」
↑ ・・・議論の中で現実を直視させる
《ビジネスを熟知したトレーナーが介入》
◆ いま今の心地よい環境が、時間差で致命傷になる
多くの場合、状況が苦しくなると、見たくない現実に蓋をし、
居心地の良い状況(幻想)に居座ろうとしてしまいがちですが、
人も企業も「ゆで蛙現象」のごとく、
既に煮え立ったお湯の中で事態に気がついても、
もう、身動きはとれません。
「今までの成功が、これから先も同じように続くわけがない」
我が社、自己の現実を真摯に受け止めることができる人財の有無、
その人財が改善、改革に向けて行動できる環境の有無が、
将来の我が社の競争力を決定づけるのは間違いのないことだと思います。