2011年10月アーカイブ

長い間、取引のあったメインクライアントから契約が打ち切られている。
かつての成功体験を捨て、社員には新しい仕事の仕方に切り替えてほしい。

ある電子部品商社の人事部長の問題意識から、
課長職を対象にした「収益力向上プロジェクト」がスタート。

今回の現場ドキュメントでは同プロジェクトのワンセッションをご紹介します。


◆ 重要なのは推進する人の意識と考え方

プロジェクトでは最終的に改革案を創り上げますが、
前段~中盤では主に考え方・意識の転換に集中しました。

改革案の実効を上げるためには、それを推進していく社員の意識や
考え方の転換が最も重要になるためです。

その為にはまず、居心地の良い状況、安住できる環境から、
引っ張り出すことが必要となります。

それがない中で、いくら戦略やマーケティングに関する知識を
インプットしようとしても、頭には入らず、
でき上がった改革案も形骸化してしまいがちです。

     《改革案》    ← 適合しなければ ←  《社員の考え方・意識》
・ 付加価値の最大化  「絵に描いた餅」   ・ そうはいっても日々の数字     
・ ソリューションの実現                  ・ 当面は今のままでも通用する
   ・・・                                     ・・・


◆ 現実を直視する

今回、題材のひとつとして使ったのは取引企業からの「ヒアリング調査結果」。

<調査結果より>
口 経営陣からは最近、特にコストダウンが求められている。よくやってくれる、
   長い間の付き合い、といった温情主義ではもう、取引はできない。

口 外部に丸投げ状態だったが、いまではメーカーと直接やりとりできる
   領域が増えつつある。自社にノウハウが蓄積される分、メリットも多きい。

口 新興国企業の参入で、「この価格で」という心理的な基準ができている。
   今後は余程、付加価値がない限りコストで選ぶだろう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

実は同社では今までに何度も「顧客満足度調査」を実施していましたが、

・現場には通達のみで終わっている
・客観的に納得させられる人財が社内に不在

等という背景から「落とし込みが不十分」という問題がありました。

調査結果を題材に、トレーナーと議論を繰り返す中で、
受講者の表情にも焦りが出てきます。

・「毎日、忙しい」状況に満足してしまっていた
・「案件をさばくこと」が自分の仕事だと思っていた
・技術の話はしても「我が社の付加価値」の話はメンバーと全くしていない
・目先の案件受注に走って、採算性を度外視していた。
 このやり方で力を入れ続けても会社全体にとってはマイナス。

《調査結果》←  (逃避・建前)   ← 《社員》
        「現実は違うんですよ」 
        「わかってはいますが」
 ↑ ・・・議論の中で現実を直視させる
    《ビジネスを熟知したトレーナーが介入》



◆ いま今の心地よい環境が、時間差で致命傷になる

多くの場合、状況が苦しくなると、見たくない現実に蓋をし、
居心地の良い状況(幻想)に居座ろうとしてしまいがちですが、
人も企業も「ゆで蛙現象」のごとく、
既に煮え立ったお湯の中で事態に気がついても、
もう、身動きはとれません。

「今までの成功が、これから先も同じように続くわけがない」

我が社、自己の現実を真摯に受け止めることができる人財の有無、
その人財が改善、改革に向けて行動できる環境の有無が、
将来の我が社の競争力を決定づけるのは間違いのないことだと思います。

現場が疲弊している、企業全体が閉塞感や停滞感に覆われている
と言われ始めて数年。それは、なぜ起こるのか...。

今回の現場ドキュメントでは、各部門から集まったリーダー達の
生の声をお届けします。

まず、今回のセッションでは、初めに各部門のリーダー達が参加した
他の部門へ望むこと、『各部門に望むこと』を書いてもらうとこから始まり、
お互いが日頃感じている事について話合ってもらった。

参加したのは下記の部門リーダー:
生産部門、営業部門、開発部門、管理部門

そこでは、今までお互いが面と向かって話して来なかった意見や
要望が多くあげられた。

 
● 開発部門→営業部門
  顧客からもっと具体的な情報を収集してきて欲しい 

● 営業部門→管理部門
  社員のモチベーションが上がる人事システムを作ってほしい

● 生産部門→全部門へ
  もっと生産現場について知って欲しい

など具体的な話がされた。

特に生産現場は

 『生産現場は本部から軽視されているように感じる』
 『営業部門や開発部門から上がって来る商品は全く生産現場を理解していない』

との声があげられた。

営業は営業で、顧客のニーズにあった商品を提供したいと考え。
開発は開発で、新たな製品を常に考える。

しかし、個々でいい物を作ろうという思いがあっても、個人の思いや
頑張りが全体から見た時に逆に上手くいかないこともある。
つまり、各部門にとっての最適が、全社の最適には決してならないのだ。

いくらいいアイディアがあったとしても、実際に製品として形にしていくのは
生産(製造)部門である。
そこを無視して、アイディアだけではいい商品は作れない。

生産は生産で、ただ物を作っているだけの現場ではなく、効率を考え、
また、良い物を作ろうと必死で考えているのだ。

しかし、他の部門からすると、
 
 『なぜこちらが思った商品が出来ないのか』
 『こうした方がいいのではないのか』

などと、感じてしまうこともある。
また、本社からも、○○%コストカットなどと簡単に言われてしまう。

 
"生産現場をもっと理解してもらいたい"というのが
生産部門のリーダーの訴えだ。

今回のトレーニングでは、生産部門の話を聞いて、
始めて現状を理解した人も少なくない。

営業部門のリーダーは、
 『新しい商品を。と思って提案し、"それは出来ない"という生産部門の
  答えだけを聞いて、ヤル気がないと思っていたが違っていた。もっと、
  現場の意見を取り入れるべきだった』

と話していた。

現場が疲れているのは、現場を無視したやり方、考え方を押しつけられ、
その通りにやることを強いられているからなのではないだろうか。

現在、現場力と騒がれているが、
現場力とは現場の社員自らが問題を発見し、
解決していくための能力を発揮すること。

商品開発にしても、実際に現場の人を入れて開発するなど、もう少し、
現場の声に耳を傾け、現場が生き生きと働ける環境を作っていく。

つまり、現場の人たちの意見をもっと尊重し、自ら力を高めていってもらう
ようサポートする必要があるのだと感じた。


このアーカイブについて

このページには、2011年10月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2011年9月です。

次のアーカイブは2011年11月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。