現場ドキュメント: 2010年8月アーカイブ

良い本に出会い、これは自分の中に取り入れようとマーカーでチェックをしている時は動
機づいていても本を読み終えた後、何もしなければ、数日後には、インパクトのあった一
節くらいしか記憶に残っていないことはよくあります。

また、ここに書かれていることを参考に業務を見直そうなどと思いながら、付箋を貼って
いる時は動機づいていても "いつか時間がある時に" ということで業務を見直す機会
は当分の間、やってこないこともよくあるのではないでしょうか。

インプットしたことで満足してしまう。

自分なりに整理して、自分のものとしてアウトプットするという、このステップなくして、自
分のものにはできません。インプットしたことで終わり、スルーさせてしまう。

本当にもったいないことです。

トレーニングの内容も、もちろん重要ですが、何より、トレーニングからの気づきをスルー
させずに、現場に移植している企業があります。

次世代経営リーダー育成コースに10名に対し、月1~2日、計15日間で進めていますが、
トレーニングが終了する度に、そのトレーニングでの気づきや学習したことを整理し職場
の上司・メンバーを集め、話し合いをしています。

最初の3回目くらいまでは、自分が学習したことなどの紹介に留まっていたようでしたが、
4回目が終了した頃から、以下のような様々な変化が起きています。

1) 参加者が気づいたこと、学習したことを題材に職場や仕事のやり方、また会社全体
  についての議論へと発展している。の議論は、トレーニングと同時進行でこのまま進
  めていきたい。

2) 職場の部下との意識のギャップを大きく感じていたが続する中で、ギャップが埋まり
     つつある手ごたえを感じている。

3) 部下と議論することにより、部下1人1人の思考や価値観が把握できてきた。

4) 職場でのレビューを通じて、自分に対する上司や部下から期待されていることが伝
     えられる。何としても、会社を引っ張るリーダーになる。

職場でなされた議論や、そこで感じたこと、気づいたことを、またトレーニングの場面に
持ち込むことによって、トレーニングと現実、個人の変化と全体の変化が相互作用を起
こしながら、うねりになっているように感じます。

「お金と労力をかけて研修をしたのに、水の泡と化してしまう...」
日々の仕事を通じて、この様なお話を良く耳にします。

今回の現場ドキュメントは着実に成果を上げている企業様の例をご紹介します。

その企業様では、
・会社を良い方向に変えていくこと
・そのために強い組織体質をつくること、
・そのためにまずは核(コア)となる人財を育成し一定の母数を確保すること、
という明確な目的のもと、経営施策として、ここ数年間、「コア人財養成プロジェクト」に
取り組んでいます。

同社のコア人財養成では十数回をかけて学習をしていきながら、自社事業の将来方向
について改革案を練り上げ、経営陣に提言していくのですが、この取り組みが成果を上
げている、と感じたのは、先日行われたフォローアップの時でした。

参加したのは、昨年度のコア人財養成プロジェクトの参画メンバー。プロジェクトが終わっ
てから約1年間経っての実施でしたが、少しでも職場を変えていこう、何か新しいことを吸
収しよう、という意識が参加者から伝わってきました。

また、議論の観点も、随分変わっている様に感じました。例えば、「外部環境が変化する
中で我々に必要なリーダーシップ」を検討するセッションでは、
・会社は何処に向かおうとしているのか、我々自身はどれだけの見解を持っているのか。
・会社のビジョンはどれだけ現場社員に浸透しているのか。
・本気でコミットしてもらうためには何が必要か。
・若手は目先のタスクに追われてしまっている。
・現状に対する危機意識を持たせるためにはどうすれば良いか。
等、リーダーとして取り組むべき我が社の課題にまで議論が広がりました。

昨年度プロジェクトが開始した当初は、どこか評論的で、議論も日常の業務以上の領域
にはなかなか発展しなかったのに、なぜ、ここまで様子が変わったのか...その背景の一
つには、参加者自身の「考え方」が変わったことがあると思います。

人は新しい知識やスキルを知ったから変わるのではなく、今の自分の現状を客観視し、
内省をすることで考え方が変わり、行動が変わります。

昨年度の十数回のプロジェクトを通じて、常に高い観点からものごとを捉える訓練をし、
そして、会社を変えていく当事者として改革案を練り上げて提言した経験が、参加者の
モノの見方や考え方を変えたのだと思います。

そして、背景のもう一つには、同社のバックアップ体制があると思います。

同社ではコア人財を養成すると共に、参加者の上司にあたる管理職のマネジメントスタ
イルを変えるための取り組みや、毎回輩出されるコア人財のネットワーク化にも余念が
ありません。

いくらOff-JTで参加者が新しい考え方を身につけたとしても、職場には職場の現実があ
ります。もし、職場が旧来型の様式なのであれば、そこから変えていかなければ、冒頭
でお伝えしたように、いつの間にか参加者は元通りになってしまいます。

満遍なく研修を導入するのではなく、明確な目的をもって、時間をかけて核となる人財を
ピカピカに磨き上げる、そして現場で放置せず、受け皿としての職場の環境も変えていく。

こうすれば絶対に会社が変わる、という秘策や奇策はありませんが、人や組織が変わる
ためにはいくつかの論理はあると思います。

この論理と自社の現実を行き来しながら、成果を上げるためのやり方を模索し、地道に
積み重ねるプロセスが、遠回りのようで実は一番近道なのではないかと思います。

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