2007年3月アーカイブ

前回のコラムにて、「人財の定着化、戦力化」をテーマに実施いたしましたOBT協会セミナーの内容を一部ご紹介させていただきました。今回は、前回の続きです。

「"若手の戦力化"すなわち"若手の独り立ちの条件"とは、何ができるようになることか?」
ある調査によると、『与えられた業務を一人で完結できる状態』という回答がいちばん多く、また「貴社において若手が独り立ちすたと周囲に認められるようになるまで要している期間は?」という質問では、回答の平均が3,4年でした。「若手の能力差が生じる要因は何か?」という問いでは、『仕事に対するモチベーションの問題』『上司・育成担当の指導の質』『本人の意思の不足』『本人の潜在的な保有能力の限界』という回答が目立ちます。

このような調査結果及び、私たちが様々な企業でお話をお聞きする中で、
"若手の将来の成長は『本人の資質に規定される』あるいは『職場の上司の指導力』"といった点で片付け、それらを"『外部団体の研修というカタチでお茶を濁す』企業があまりにも多い"という事を感じます。
戦力化ということを全く放棄し、『うちの社員は意識が低い、主体性がない』と嘆いている関係者が大変多いのです。

では、若手の戦力化のために必要なこととは何でしょうか?私たちは、以下のように考えています。
(1) 人材要件の明確化
(2) OJTのプログラム化
(3) 早期戦力化のための諸施策の体系化
a.成長段階に応じた育成システムの構築
 ・入社1~2年目  ・入社3~5年目  ・入社6~7年目
b.リーダー資質向上に向けた取り組み強化
c.計画的な異動・ローテーションの実施
d.キャリア形成支援の充実・強化
e.企業風土の構築

ここでは、セミナーでお話させていただいた内容から、「(2)OJTのプログラム化」「(3)e.企業風土の構築」について触れさせていただきます。
「(2)OJTのプログラム化」
若手の能力開発として最も活用されている手段はOJTです。しかし、プログラム化されていないOJTは、指導が場当たり的になる危険性があり、また、指導を担当する上司は"仕事が忙しい"と指導を後回しする可能性が高いのです。
若手に対する能力開発の成否は、その『OJTを担当する上司の質』に大きく影響されます。
そして、若手のOJTが上手くいっていない企業では、若手に限らず全ての階層で、OJTが機能していない場合が多いのです。

「(3)e.企業風土の構築」
"社員をいかに育てていくか"という人材開発が、非常に注目を浴びています。
企業の活力が生み出されるメカニズムとは、"社員が仕事に対するモチベーシヨンを高め、その組織で働くことに喜びを見出し、自らのレベルアップに努める"等といったことが組織に対するコミットメントとなり、企業の競争力に結実していくということです。
社員がこの組織にいて将来成長でき、自分の仕事に誇りを持てるような"魅力的な組織風土/社風作り"が大切です。
社風というのは「見えざる資産」です。それは企業の貸借対照表には載らず、金額にも換算できません。そのような見えざる資産がかつてないほど重みを持とうとしています。
雇用の流動化が進み、社風というのは磁石のように働く人たちをひきつけたり、あるいは反対に反発や離反を招いたりします。

若手からたくさん意見が発信される、お互いを思いやる人が多い、なんとなく活気がない・・・など、人材の定着化には、この目に見えない"風土"が大きな影響を与えています。全ての人にとって幸せな環境というのはないと思いますが、その会社にとって必要な人材が、魅力を感じられる社風・風土である、ということがこれから更に求められるのだと感じます。


On the Business Training 協会  伊藤 みづほ

3月10日(土)に、名古屋にてOBT協会のセミナーを実施いたしました。
テーマは「人財の定着化、戦力化」について。
当協会の代表が2時間ほど講演をさせていただきました。
今回は、セミナーでお話させていただきました内容の一部をご紹介させていただきたいと思います。

昨今マスコミでは、M&A・経営統合というニュースが連日報道されていますが、これらは主に「国内市場の持続的圧縮圧力への対応」と「買収の脅威」等が要因です。国内市場の縮小については、特に少子化が大きな影響を与えています。

人口減少によって、
・国内市場に持続的に縮小圧力がかかり、より競争が激化
・人が希少になっていく
ということが言えます。これは、一定の成長ということを前提に構築されてきた様々なトータルシステムを新しく作り直すことが求められますし、企業も新しい成長モデルを模索する必要があります。

また、このような時代には「人の能力をどれだけ活かせるか」が、最大のテーマになります。人のパフォーマンスを最大限発揮させることが求められるのです。

ちなみに2006年、25~34歳の若手が1年に転職した数は過去最高の110万人となりました。若手の離職率の高さについては、様々なところで触れられていますが、ある調査によりますと、"若手社員の定着率を高めるための取り組みがなされている企業では、比較的定着率が高く、また、若手社員の定着率と企業業績には相関関係がある"という結果も出ています。"若年人材の定着が、直接的に企業の業績に反映される"というわけでは決してありませんが、"組織の活性化につながり、業績向上に結びついている"ということであると思います。

厚生労働省による"若年者の職業生活に関する実態調査"によりますと、若年者の離職理由は以下の通りでした。

【入社一年以内の退職者の場合】
・仕事が自分に合わない、つまらない...特に1年以内の離職(能力や適性に見合わない業務を担当
・賃金や労働時間等の条件が良くない
・人間関係が良くない...(上司、先輩、同僚、特に上司が退職理由のトップ)

【入社3年以上の退職者の場合】
・会社に将来性がない...(方針や戦略の不透明さ、経営情報の公開)
・自分の将来のキャリア形成の見込みがない...(将来この会社にいてどのようなキャリアを積めるか)
・賃金や労働時間等の条件が良くない

※入社2~6年までは「この会社にとどまろう」とする気持ちは1年目よりもかなり低くなり、7年目に入るとようやく1年目のレベルに戻る

若年者の育成を重視している企業では、「社内に若年者を成長させるための制度や仕掛け・職場環境が作られ、企業の方針や制度等に関して十分な情報提供」がなされています。
これらより若年者の定着率は高まり、業績向上に結びついています。

若年者の育成を重視していない企業では、「若年者がのびのびと活躍できる環境がなく、また入社後のイメージギャップも大きいために、悩みや疑問が解消できないままモチベーションが低下」し、離職してしまいます。

若年者の高い離職率の問題を論じる際には、単に若年者の意識やその周辺に問題の所在を求め対応策を講じるだけでなく、「わが社の"若年者マネジメントのあり方"そのもの」に着目しなければいけません。

若年者の育成を重視し、定着-戦力化のための取り組みを着実に行うことにより、企業を成長させていくという視点がなければ、中長期の発展は望めないのです。

そのためには、経営層の意識改革と定着のために何をなすべきかという施策等を考えることが重要となります。


On the Business Training 協会  伊藤 みづほ


*続きは後編でどうぞ。
  社風が人を惹きつけ、社風が人を引き離す ②

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