OBT 人財マガジン

2007.03.14 : VOL18 UPDATED

人が育つを考察する

  • 社風が人を惹きつけ、社風が人を引き離す ①

    3月10日(土)に、名古屋にてOBT協会のセミナーを実施いたしました。
    テーマは「人財の定着化、戦力化」について。
    当協会の代表が2時間ほど講演をさせていただきました。
    今回は、セミナーでお話させていただきました内容の一部をご紹介させていただきたいと思います。

    昨今マスコミでは、M&A・経営統合というニュースが連日報道されていますが、これらは主に「国内市場の持続的圧縮圧力への対応」と「買収の脅威」等が要因です。国内市場の縮小については、特に少子化が大きな影響を与えています。

    人口減少によって、
    ・国内市場に持続的に縮小圧力がかかり、より競争が激化
    ・人が希少になっていく
    ということが言えます。これは、一定の成長ということを前提に構築されてきた様々なトータルシステムを新しく作り直すことが求められますし、企業も新しい成長モデルを模索する必要があります。

    また、このような時代には「人の能力をどれだけ活かせるか」が、最大のテーマになります。人のパフォーマンスを最大限発揮させることが求められるのです。

    ちなみに2006年、25~34歳の若手が1年に転職した数は過去最高の110万人となりました。若手の離職率の高さについては、様々なところで触れられていますが、ある調査によりますと、"若手社員の定着率を高めるための取り組みがなされている企業では、比較的定着率が高く、また、若手社員の定着率と企業業績には相関関係がある"という結果も出ています。"若年人材の定着が、直接的に企業の業績に反映される"というわけでは決してありませんが、"組織の活性化につながり、業績向上に結びついている"ということであると思います。

    厚生労働省による"若年者の職業生活に関する実態調査"によりますと、若年者の離職理由は以下の通りでした。

    【入社一年以内の退職者の場合】
    ・仕事が自分に合わない、つまらない...特に1年以内の離職(能力や適性に見合わない業務を担当
    ・賃金や労働時間等の条件が良くない
    ・人間関係が良くない...(上司、先輩、同僚、特に上司が退職理由のトップ)

    【入社3年以上の退職者の場合】
    ・会社に将来性がない...(方針や戦略の不透明さ、経営情報の公開)
    ・自分の将来のキャリア形成の見込みがない...(将来この会社にいてどのようなキャリアを積めるか)
    ・賃金や労働時間等の条件が良くない

    ※入社2~6年までは「この会社にとどまろう」とする気持ちは1年目よりもかなり低くなり、7年目に入るとようやく1年目のレベルに戻る

    若年者の育成を重視している企業では、「社内に若年者を成長させるための制度や仕掛け・職場環境が作られ、企業の方針や制度等に関して十分な情報提供」がなされています。
    これらより若年者の定着率は高まり、業績向上に結びついています。

    若年者の育成を重視していない企業では、「若年者がのびのびと活躍できる環境がなく、また入社後のイメージギャップも大きいために、悩みや疑問が解消できないままモチベーションが低下」し、離職してしまいます。

    若年者の高い離職率の問題を論じる際には、単に若年者の意識やその周辺に問題の所在を求め対応策を講じるだけでなく、「わが社の"若年者マネジメントのあり方"そのもの」に着目しなければいけません。

    若年者の育成を重視し、定着-戦力化のための取り組みを着実に行うことにより、企業を成長させていくという視点がなければ、中長期の発展は望めないのです。

    そのためには、経営層の意識改革と定着のために何をなすべきかという施策等を考えることが重要となります。


    On the Business Training 協会  伊藤 みづほ


    *続きは後編でどうぞ。
      社風が人を惹きつけ、社風が人を引き離す ②