2007年5月アーカイブ

全社員の適正人件費総額と企業にとっての適正人件費とのバランスをどう取るか?
企業の支払能力と、社員の納得性を勘案して決める管理である。
この領域は、財務管理としての側面が強い。

企業支出の項目を大きく分けると「人件費」「製造費」「販売費」「経費」であるが、その中でも賃金を含む人件費はすべての企業において例外なく大きな割合を占めている。
そして更に人件費の中で「賃金」は最も大きな割合を占めている。
したがって、人件費、賃金を適正にコントロールすることが求められる。

人件費の構成は、大きくは役員人件費と社員人件費に区分できる。
役員人件費の内訳は、役員報酬、役員賞与、役員退職慰労金、法定福利費(社会保険料)、福利厚生費(住宅補助、社員旅行補助など)、研修費である。

社員人件費の内訳は、賃金(所定内給与、時間外手当、賞与、退職金)、法定福利費(社会保険料)、福利厚生費(住宅補助、社員旅行補助、厚生施設維持費など)、募集採用費、研修費、その他である。
そこで、この人件費をどう見るかであるが、人件費は、あくまでも企業の付加価値から分配されるものである。

付加価値とは、企業が経営活動によって新しく生み出した価値のことであり、その金額は、売上高から他企業から購入し消費した部分を差し引いた額である。
生み出された付加価値は、次のとおりに分配・支払が行われる。

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付加価値の分配先は企業と企業そのものを構成する人々である。
分配分の総額を「株主」、「経営者」、「労働者」、「企業」にどんな割合で配分するのか、企業の重要な決定事項である。賃金には、給与、賞与、退職金がある。
退職金は各年度に損金経理が可能な方法を採るなどして、支給原資を別立て管理して、各年度の支出または費用を平準化することが望ましい。
賞与は、支給総額を各年度の利益または付加価値額に連動させて決定する方法を採ることが望ましい。これより、給与の支給総額は個別給与の積み上げ額を微調整する程度で総額人件費のコントロールが容易となる。

On the Business Training 協会  栗田 猛


*続きは後編でどうぞ。
  予算化された人件費管理で業績連動型へ⑤

企業にとって、中長期的な経営目標や具体的な計画が、結果として実現できるような人件費の支払能力が維持される方法とは、何か?
そこで重要になるのが、人件費を"変動費化する"という発想である。
これは、人件費も他の費用と同じように、売上高や仕事の繁閑に合わせて変動させ、その時々の企業状態に合った適正な人件費を確保するという考え方である。
人件費の変動費化に関しては、次の3通りが考えられる。
①パート・アルバイト・派遣社員の活用
②アウトソーシング(生産の外部委託=ファブレス、業務の専門業者への委託)
③業績連動型賞与など成果配分型の給与システムの導入
例えば、企業の立ち上げ段階では、各業務に正社員1人分のロットがあるとは限らないので、そうした場合には、アルバイトと専門業者の組み合わせで対応し、必要に応じ正社員に切り替えていく。
また、アウトソーシングの導入により、業務ごと外に出すことも検討する。
また、賞与については、これまでのような「基本給の何か月分」といった決め方ではなく、利益が出た場合に業績貢献度に応じて支給する。
労働分配率という経営指標は、付加価値に占める人件費の割合を表したものである。
この数式の逆数を「人的生産性」と呼んでいる。
簡単に言えば「給料の何倍稼いでいるか」を表す数字である。
優秀な企業ではこれが3以上になる。
しかし、この数字が2を下回ってしまった企業が多いのが実態である。(つまり労働分配率が50%以上ということ)
実はこの人的生産性の改善目標を立てることが、経営成果と人件費のバランスを取るための第一歩なのである。
目標とする人的生産性が決まれば、それを元に許容人件費が算出できる。
すなわち、目標付加価値÷目標人的生産性=許容人件費となる。
ここで、
許容人件費<実際人件費
となる場合には、人件費圧縮策か、付加価値増加策か、或いはその両方か、をよく検討し実施する必要がある。
いずれにせよ、人件費の変動費化とは、付加価値の一定基準内に人件費を適切にコントロールすることである。
人件費のコントロールということを考えた場合、一番手が付けやすいのが賞与である。
月々の賃金をドラスティックに変動させることの可否や、労働基準法の不利益変更との関係からも、慎重を要する。
賞与については、あくまで会社業績によってその配分を検討する、としておけば比較的変動させ易く、また社員の納得も得やすい。
賞与原資総額は、次の計算式で求める。
(対象期間内実績付加価値÷目標人的生産性)-対象期間内既払い人件費
こうすることによって、人件費が許容範囲を超えることを防ぐことができる。


On the Business Training 協会  栗田 猛


*続きは後編でどうぞ。
  予算化された人件費管理で業績連動型へ④

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