2007年6月アーカイブ

前回()述べたように、人件費は月例賃金だけではなく、それ以外の賞与、退職金、その他法定福利費などがある。
このことから、経営において人件費を広く捉える必要がある。
労働厚生省の調査によれば、人件費は毎月賃金の1.6倍にもなっている。
毎月の賃金を100とすると、人件費全体は概ね160~170程度になる。
人件費項目の中で、賃金以外に大きなウエイトを占めるのが、賞与20%弱、福利厚生費10%弱と高い。
自社の人件費はどのような指数を示しているか1度チェックしていただきたい。
例えば、毎月の賃金を100とすると、人件費全体は概ね120~130程度であったとしたら、どう見るべきであろうか。
一般的に、人件費全体は概ね160~170程度という水準から見れば、異常値と捉えられる。
このケースは毎月の賃金が高いために、全体の指数が相対的に小さくなっているのである。
賃金が高いのはなぜか?
1つは、残業が考えられる。
残業手当も賃金に入るから、賃金に比べてその他の指数が相対的に小さくなるのである。
もうひとつは、非正社員比率が高い場合が考えられる。
非正社員には、通常賞与、退職金の支払いは、発生しないから賃金に対して指数が相対的に小さくなるのである。
総額人件費を考える場合、人件費科目に現れた額ばかりに意識が行くが、忘れてならないのが、休日や時間に関することである。
例えば、労働時間を短縮した場合その跳ね返り人件費は、次の3点に及ぶのである。
1.週44時間から40時間に短縮すると、賃金の上昇率は(賃金/44)÷(賃金/40)=110%となり、賃金は10%上昇する。
2007年の春季労使交渉は、主要企業の速報結果(日本経済新聞3/29)によると賃上げ率(月例給与の上昇率)は1.83%程度であるから、いかに高い上昇になるかがお分かりいただけると思う。
2.年間休日を、97日から104日に増やしたとすると、月額25万円の場合は、割増賃金の時間単価は、1999円から2053円になる。この単価に割り増し率が乗じられることになる
3.週44時間労働をした場合は、週40時間に短縮後は、4時間が割増賃金の対象になる。今後この割り増し率は、条件如何によってはさらに上昇するであろう。

以上のように、単に時間短縮という面だけではなく、それに伴って賃金が上がり、単価が上がり、割り増し率が上がることによる、総額人件費の上昇を考えなければならない。


On the Business Training 協会  栗田 猛

総額人件費管理は、事前に人件費の総枠を決めて管理していくというものである。
その意味で、予算化された人件費管理なのである。
期が終わって人件費となる費目を集計した結果、こうなりましたというのは、あくまでも事後集計であり、結果管理である。
総額人件費管理は、予算化された人件費(パイの大きさ)を管理するものであり、事前主計、事前管理である。

通常の業務でも、そうであるように、管理というものは、PDCAのサイクルを回すものである。
同じように、総額人件費管理も総額人件費のトータルを経営戦略や経営計画(付加価値経営計画)と連動させ、事前に計画し、期末に実績が出れば計画と比べてどこに差異が生じたかをチェックして次の計画につなげていくという、PDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)のサイクルで管理するものである。
そういう意味で総額人件費管理は、経営と人事を結びつけるパイプ役でもある。

では、予算化された人件費(パイの大きさ)はどのように決めるのか?
大きくは3つの方法が考えられる。

1つは、企業の付加価値から、労働分配率を介して総額人件費を決める方法である。
企業の付加価値が1000百万円、労働分配率60%の場合の総額人件費は、
1000百万×60%=600百万円となる。
2つ目は、売上高との関連で、売上高人件費比率を介して総額人件費を決める方法である。
そして、3つ目は、売上総利益との関連で、売上総利益人件費比率を介して総額人件費を決める方法である。
この場合の、労働分配率、売上高人件費比率、売上総利益人件費比率は、その企業の過去の実績を勘案して、定めた目標とすべき比率(適正比率)を求める。
では、予算化された人件費(パイの大きさ)が決まったら、それをどのように配分するのか?
大きくは2つ視点が必要である。
1つは、人件費の各科目への配分である。
ちなみに、人件費科目には次のようなものがある。

070613.gif

総額人件費(パイのおおきさ)は、決まっているから、何かを厚くすれば何かを薄くしなければならない。
人件費の各科目への配分とは、給与、賞与、退職金、福利厚生などへの配分をどのようにするかということである。

2つ目は、政策項目への配分である。
政策とは、年功重視か、能力重視か、職務重視か、成果重視か。
何を重視して配分するかである。

On the Business Training 協会  栗田 猛


*続きは後編でどうぞ。
  予算化された人件費管理で業績連動型へ⑥

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