2008年5月アーカイブ

昨今、企業活動の様々な面において安全に関わる問題が頻発しています。特に昨年から頻発している食に関する問題は、消費者の食に対する不安や疑心暗鬼を生み出しています。

 

企業経営においては、内部統制、J-SOX法、コンプライアンス、消費者保護、また食に関連するものでは、HACCPやISO22000など、法律にもとづく形でのリスクマネジメントや様々な管理手法が導入されています。

 

食に関する不祥事が続いた昨年秋、ある食品メーカー様から「リスク管理の研修を実施をしてほしい」というご相談をいただきました。『頻発する食品会社の不祥事は他人事ではない。我が社にはその危険要素がないと思うが、リスク管理に関する社員の意識レベルを向上させる必要がある』と、経営トップからの指示があり、年明け早々に実施したいとのことでした。

 

・コンプライアンスの規定はあり、全社員に向けて配布し、広報も済んでいる 

・実際に起きたお客様からのクレームや未然に防いだクレーム、ヒヤリハットの事例について社内で勉強会を開いている

・安全管理の講習も夏から実施しており、現場の社員の方々は全員受講済み

 

等、社内でできることは実施しており、不祥事やリスクに関する危機意識が高まる研修を実施してほしいというご要望でした。

 

 

企業不祥事の原因として、第1に経営者のコンプライアンスに関する意識やリーダーシップの欠如等があげられ(73.2%)、第2に暗に不正を助長するような風土、営利・業績第一主義等の社内体質があげられた(56.5%)というアンケート結果があります。

 

1.経営者(コンプライアンスに関する意識やリーダーシップの欠如等) 46973.2%

2.社内体質(暗に不正を助長するような風土、営利・業績第一主義等) 36256.5%

3.社内体制(不正を早期発見する社内のチェック体制の未整備・整備不良等) 24438.1%

4.経営環境(企業間の競争激化、業界の暗黙の慣習等) 11117.3%

5.従業員(コンプライアンスに関する意識等) 7010.9%

 

また、社内における不正行為の有無については、

1.ないと確信しているが、正直なところ不安はある ・・ 52

2.自信を持って、ないと言える              ・・ 44

 

企業不祥事の原因(企業の社会的責任に関するアンケート結果)

社団法人経済同友会 第15回企業白書 2003年発表

 

 

不祥事や組織リスクに起因する事故・事件を起こした企業に対して、社会や市場の目は厳しく、結果的に企業の信用は大きく失墜し、業績の低下、存続すら危ぶまれる事態となることもあります。

 

「内部統制」や「個人情報」「J-SOX」といったコンプライアンス対応の仕組みは作れるが、その仕組みを本来の目的どおりに運用できるかどうかは、その組織風土や体質に規定されてしまいます。

 

 

OBT協会では、「企業不祥事は何故、起きるのか」という問いに対して、組織風土や体質を重要な要因とし、組織リスク(組織に内在する潜在的な危険性)の解決に向けては、組織風土の改革を視野に入れた取り組みなくして、解決しないと考えています。

 

 

不祥事やリスクに関する研修をご相談いただいた食品メーカー様の人事部の方と一緒に内部統制室・経営企画部に働きかけ、『コンプライアンスの強化に向けては組織風土の改革がカギとなる』という見解のもと、バラバラに遂行するのではなく、それぞれがしっかり連携をとる体制を議論していきました。       

 

「と言っても、他に何をすればいいのか?」

内部統制室では、以前に一部の人たちではあるがヒアリングを実施した。ヒヤリハットやクレームなどの情報を伝える仕組みもあるなど、「他に何をすればいいのか?」という議論が繰り返されました。

 

「まず実態をしっかり把握すること」パートや派遣の方、そしてアルバイトの方も含め当社で働く従業員全員に、『組織リスクの態調査』を実施することになりました。当社にどんなリスクが潜んでいるのか、リスクに対する意識の状態は。ルールが当然守られる空気が職場にあるのか・・・など、定量的な調査と定性的なフリーコメントを組み合わせオーダーメイドで調査を作成し、全従業員に実施しました。

       

「ここからが本番」

調査結果をもとに、人事部ではどういう教育施策を打っていくのか。内部統制室では、コンプライアンスの浸透に向けてどう動いていくのか、また社内でやるべきことは何か、第三者が担当するところは何かなど、全体像を描いていきました。

 

 

次回は、昨日実施された『組織リスク』に関する教育についてお届けいたします。

 

 

On the Business Training 協会 伊藤 みづほ



*続きは後編でどうぞ。
 
組織リスクマネジメント ②

先月、OBT協会で担当させていただいた新入社員研修を拝見させていただきました。
私自身、自分が受けた新入社員研修の内容も思い出せないくらいですが、この年齢で
見ていても、新入社員研修はとても刺激になり、気づかされることが多くあります。
 
新入社員研修で、マナーやPDCAなどを学んだ後、「来客されたお客様に商品パンフ
レットを準備する」などの日常の業務の中で発生する仕事を設定し、即興で新入社員に
どう対応するか実演(ロールプレイ)をしてもらいました。
"今、ここで自分は何をすべきか""どうするのがベストか"を自分で考え、みんなの前で
対応します。
 
さっき学んだことが一つも行動で出てこない、頭の中が真っ白になり、何をどうしていい
のかアタフタしてしまっている新入社員。対応が終わり、自分の席に着いてから
「ああ、こうすればよかった」と悔やんでいる新入社員。
 
このセッションを振り返り「理解していたつもりだったけど、体が動かなかった」
「他の人がやっている時には客観的にああすればいいのにと気づくが、自分の番に
なったら何をどうしたらいいのかわからなかった」など自分自身、お互いをレビューして
いました。
 
「今、できなくて当たり前。わかった気になっているのが一番まずい。
大切なのは振り返ること。できなかったことを振り返ることが大事。
"私なりに一生懸命やっています"これではいけない・・・」トレーナーのこの言葉は、
きっと私自身に言っているなと思いました。
 
二日目の朝の「昨日の振り返り」にて

 ・ 昨日、全くできなかった。家に帰ってから、できなかったことを自分で何度も
  練習しました。
 ・ 最初は「自分が当たらなくてよかった」と思っていたが、失敗したことで
  自分の印象にも残るので、やった方がよかったと思い直した。
 ・ 今まで、振り返る習慣がなかったが、振り返ることで質があがるとわかった。

等を発表していました。
 
気づくこと、できない自分を認めること、悔しがること、他から学ぶこと、努力すること。
この当たり前のことに真剣に取り組む新入社員たちの姿勢から、"初心に帰る"という
大事な経験をさせてもらいました。
 
連休が明け、多くの新入社員がそれぞれの仕事の場に配属されていきました。
 
今年の新入社員の多くは小学校入学時代に週五日制が始まった「ゆとり教育世代」。
順位がつかない徒競走や、皆で手をつないで一緒にゴール・・・そんな運動会も
この頃からではないでしょうか。
 
人事の方に最近の新入社員の傾向をお聞きすると、ゆとり教育や少子化の影響が
あってか「競争心がない」「貪欲さがない」「受身的」「指示待ち」「理屈家」「安定志向」
「思いがないのに自己実現をいう」などが多く出てまいります。
私自身、自分のことは棚に上げ、最近の若手は確かにそうだと頷き、また同世代と
飲むとつい「最近の若い人は・・・」と愚痴の一つもこぼしてしまいます。
 
新入社員自身に対するアンケートでも自己評価について、「安定志向が強い」という
回答が7割強。「指示がないと仕事がしにくい」5割。「順位をつけられることや競争が
嫌い」4割強という結果が出ています(日本経済新聞社)。
 
どれも頷ける傾向ですが、新入社員、若手を見る時にこういったフィルターをかけて
しまっていないか、一人ひとりをちゃんと見ているだろうかと自分に問いかけることも、
人財を育成する立場にある管理職、先輩社員に重要であると思います。
 
 

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