OBT 人財マガジン

2008.06.11 : VOL47 UPDATED

人が育つを考察する

  • 組織リスクマネジメント ②

    先回の現場ドキュメントでお伝えした食品メーカー様から「リスク管理の研修を実施してほしい」というご相談をいただいてから、約半年後の5月、管理職の方を対象に『組織リスクマネジメント教育』第一弾が実施されました。

     

    ご相談いただいた当初の目的は、

    コンプライアンスに関して社内でできることは実施しているので、『不祥事やリスクに関する危機意識が高まる』研修を実施してほしいということでした。

     

    「組織リスクの核は組織風土」

    昨年秋から、内部統制室・経営企画部、そして人事部の方々と議論を重ねてきました。

    食に関する不祥事が頻発する中、研修を実施しても問題が解決するのではなく、コンプライアンスに関する取り組みと並行して、社員の活力とモラル意識を高め、社員がリスクに自発的に低減・対応する企業風土を作り上げていくことが不可欠であるとし、全体像を描いていきました。

     

    そのために、管理職全員を対象とした 「組織リスクマネジメント教育」では

    ① 企業経営に関わる様々なリスクと我が社のリスク

    ② 他社事例をもとにリスクの発生の構造と対処についての学習と自社俯瞰

    ③ 自組織におけるリスクの実態とその対策

    をポイントに展開していきました。

     

     

    ①企業経営に関わる様々なリスクと我が社のリスク

    我が社・自組織のリスクについて具体的に上げながら、我が社のリスクを議論していきます。

    クロスファンクションで議論する中で、様々なリスクが実在する我が社の実態、またリスクに対する感受性の違いなどを浮かび上がり、共有化されていきます。

    ある管理職の方がおっしゃった「いつ、不祥事が起きてもおかしくないぞ」という一言に、管理職の全員が頷いていました。

     

    ②他社事例から学び、自社・自組織を俯瞰する

    不祥事が起きた実在する企業を題材に、その発生の構造を考えていきます。結果として不祥事が起きているので、その構造は自ずとわかりますし、その不祥事を分析した書籍や情報も多くあります。起きた不祥事の構造を理解することが大切なのではありません。

    実際に起きた不祥事と我が社・我が組織・自分を照らし合わせ、

     

    ・他社事例はどの企業でも起こりうること。事故や不祥事野の原因には特殊性は何もない。

    ・不祥事が起きる過程はその時点で本当に間違いであったのだろうか。

     その時点において、業務改善を目的としての判断として、間違っていたと言い切れるだろうか

    ・今やっている自分達の"理にかなっている"やり方が、中長期的にはどうか

           ・

           ・

    などのように、自社・自己俯瞰を深く繰り返していきます。

     

    管理職の方々から、「不祥事が起きたから、間違いであったとわかるが、自分がもし、この会社の当事者であれば同じ判断をしたと思う」や「私の職場でも改善や効率化を図り、結果を出し、評価されているものがある。しかし、殆どのものが中長期的に考えた場合という視点では見ていない」、また「食を扱う我が社なのに、不良品の発生などに対する感性が弱くなっているのではないか」など様々な意見が出され、我が社、自組織のリスクに対して議論を深めていきました。

     

    実際に起きた不祥事や事故の原因やメカニズムなどを分析し、理解することももちろん大切です。

    しかし、最も重要なことは、それらの題材から学んだことを、どれだけ高い観点から、また広い視野で自社、自組織、また自分に俯瞰できるか。

     

    OBTでは、この自社・自組織・自己俯瞰のプロセスこそが教育だと考えています。

     

     

    On the Business Training 協会 伊藤みづほ

     

    *続きは後編でどうぞ。
      
    組織リスクマネジメント ③