現場ドキュメント: 2011年8月アーカイブ

価格下落、利幅の減少、縮みゆく日本市場 ... ...
ジリ貧状態から脱するため、海外進出を急ぐ日本企業。

経営方針に「グローバル」を掲げる企業はこの1、2年で激増しましたが、反比例
する様に、"グローバル化"という言葉が独り歩きしていることを強く感じます。

人財の側面では、"グローバル化"に対する打ち手は大抵、次に絞られるように思います。

◇育成(教育):語学やコミュニケーション、異文化の学習、早期の現地配属
◇採用     :海外人材の採用

これらは重要ですが "=グローバル化" なのかといえば、
必ずしも、そうとは言い切れないのではないのでしょうか。

なぜなら、海外売上比率50%以上を上げ、
世間的に「グローバル企業」と言われていても、
「我が社では"グローバル"という言葉を聞いても、
  人や組織によって
認識の仕方が未だにバラバラ」
というお話を担当者様から、聞くことがあるからです。

では、何が足りないのか。日々の仕事を通じて感じることが一つあります。

それは、例えば、
「我が社にとってグローバルでビジネスをすることとはどういうことなのか」
等といった本質的なテーマに対し、会社を上げて深掘りする取り組みが未だに
少ないことです。

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先日、国内トップクラス、世界の売上シェアでも10位以内に入るメーカー様にて、
課長職を対象にトレーニングを実施した時のこと。

同社の市場規模は20年後に100兆円を超える予測が経っていますが、
全体の2割にも満たない領域で新興国を含めた多くのメーカーがせめぎ合い、
残りの8.9割は、管理・運営事業を主体とする欧米企業が占めています。
経営トップからのオーダーで、次の問いに対して答えを出す事がトレーニングのテーマと
なりました。

「海外の売上比率を高めた時、我が社はどの領域で、
  何処を相手に、どの様な戦い方をするのか」

選抜された10名の課長は次期経営リーダーとして学習を進めながら、
この問いに対する"より妥当な答え"を導き出します。

特に初回のトレーニングでは、以下が議論の焦点に。

「汎用化、国際規格(標準化)このままが進んだ時、
  我が社の"技術力"は優位性足りうるか」


【トレーナーを交えての参加者の議論】

「"技術の流出"などと言っている場合ではない。汎用品という潮流は避けられない」
「地場企業、特に韓国、ブラジルメーカーのコスト競争力の脅威。
  ただし単純に高級志向にいけば、勝てるかと言えば極めて疑問」
「国内市場が主戦場だったからこそ、我々で仕様を決める事ができた。
  国際規格が基準になった今、以前の優位性は通用しないのではないか」

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成長市場を求める企業にとって、「海外進出」は避けて通れない道。

しかし、「国外に出る」目先の対応を急ぐあまり、本質的なテーマは
手薄になっている様に感じます。

「我々で言うグローバル化とは何か」

一朝一夕で答えは出ませんが、この様な本質的なテーマを深堀し、
我が社なりの定義を持つ事が本当の意味で、海外で通用する力、
競争力に繋がるのだと思います。


企業を取り巻く事業環境は目まぐるしく変化しているにもかかわらず、企業のなかには、
かつての事業構造を維持したままで対応している例は少なくありません。

持続的な成長を果たすために、常に自社の事業構造を見直し、
改革を続ける必要がある現在、この本質的な問題に取り組むために、
事業構造改革を選抜型の次世代リーダー育成のテーマとされる企業が多くあります。

事業構造改革をテーマにしたトレーニングの場合、
大きく以下のようなステップを行ったり来たりしながら、
学習→気づき→思考の変革を繰り返していきます。

1.我が社が置かれている事業環境を正しく把握する
          ↓  ↑
2.今後の事業環境の動向
      ↓  ↑
3.自社の事業構造改革の方向性
      ↓  ↑
4.事業構造改革案の立案 

ステップの1、2である自社を取り巻く事業環境の認識や、今後の事業環境の動向を
議論する際、参加者の発言で多いのは、

・ とは言っても、頑張ればまだどうにかいけるのではないか
・ 顧客の要望も厳しくなってきていると実感もしており、危機感はあるのだが、
  どうしていけばいいのかがわからない
・ 上が方向性を出していない
・ 今いまの業務に追われていて、じっくり考える時間がない
・ まだやるべきことがあり、それをやってからではないか

など、参加者間における「自社の現状認識」と、これを誰がやるのだという
「当事者意識」に大きな違いが見受けられます。

また、その後のステップ3.自社の事業構造改革の方向性を検討する際、議論が
いつのまにか、"今いまの話"や"商品軸"の話になってしまう。

各企業のトレーニングには、できる限り張り付いているのですが、
このような現象は、多くのトレーニング場面で見受けられます。

これまでの自分の構え   vs   リーダーとして求められている構え
これまでのものの見方  vs  新たな見方、視点
    これまでの考え方  vs  新たな考え方
       ・
       ・ 

これらの葛藤を講師が何度も引き起こすのですが、ここを抜け出すまでが、参加者と
講師が一番戦い、参加者、そして講師にとって一番しんどい場面のように思います。

この様々な葛藤の中で、人はリーダーとしての自分の姿勢や、会社や事業などに
対する考え方を変えていくと実感してます。

事業構造改革を成し遂げるためには、事業構造改革に向けての絵やシナリオの
素晴らしさも重要ですが、改革案を浸透させ、実現していけるリーダーが、我が社に
質・量的にどれだけいるかどうかではないでしょうか。


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