2008年6月アーカイブ

食品偽装や雇用、環境問題にデータ改ざん、製品事故、情報漏洩や流出など、企業を取り巻くリスク事例は様々です。それらへの対策として、例えば、情報漏洩や流出などに対する情報セキュリティーシステムなどは日々新たな技術が開発され、また食の安全・安心に対しは、HACCPやISO22000など、法令にもとづくリスクマネジメントの他、様々な管理手法も開発されています。

しかし、企業を取り巻くリスクは増加の一途を辿り、また複雑化しております。

 

答えや秘策、完全な仕組みや手法などない中で、どう策を打っていくのか。

仕組みやシステムでは防げない問題をどう対処していくのか。

 

 

昨年秋から、内部統制室・経営企画部、そして人事部の方々と議論を重ね実施した管理職を対象とした「組織リスクマネジメント教育」での議論をお聞きし、「組織リスクの核は組織風土」にあると実感しました。

 

現場の活力をなくさず、自発的にリスクを低減し、対応する企業風土をどう醸成していくのか。

企業として、そして人としての倫理観をどう維持していくのか。

愛社精神、我が社の製品・サービスへの愛情をどう培っていくのか。

 

仕組みや手法、システム、また規定ももちろん重要です。

しかし、「組織リスクの核は組織風土」という認識の上で、上記のようなことに管理職として、また会社としてどう取り組んでいくのか。ここに解を持ち、取り組むことが本当に重要であると感じました。

 

 

「教育を通じて、何をすべきか。何ができるのだろうか。」

 

食品メーカーでの管理職を対象に「組織リスクマネジメント教育」では、

① 企業経営に関わる様々なリスクと我が社のリスク

② 他社事例をもとにリスクの発生の構造と対処についての学習と自社俯瞰

③ 自組織におけるリスクの実態とその対策

をポイントに展開していきました。

 

先回の現場ドキュメントでお伝えした通り、②の実在する他社事例をもとにしたステップでは、企業が持つリスクの本質を掴み、その上で自社俯瞰を行ないました。

 

 

③自組織のリスクの実態を題材に

 

ここでは、事前にそれぞれの担当職場から、『私の組織のリスク』についてアンケートをとり、それを題材に、「我が社」「自組織」のリスクを俯瞰していきます。

 

『私の組織のリスク』アンケートでは、

人的ミスにより生じるリスクや、効率化の行き過ぎにより生じるリスクの要因になるものを、具体的にあげ、それらの要因が私の組織に存在するのか、しないのかを、担当組織のメンバー全員にアンケートで聞いています。

 

自組織のリスクの実態について、感覚や思い込みではなく、目に見える形で把握する。

担当組織のアンケート結果を手にした管理職の方々の反応は様々ですが、

多かった意見としては

   ・自分の担当組織の現状は、不祥事を起こした実例企業と変わらないのではないか

   ・自分が思っていたより、良くない状況である。

・部下の方が、実態をよくわかっている

・早急に手を打たなければ

・このアンケートを職場で議論し、解決のために徹底的に議論していきたい

などがありました。

 

アンケートはあくまでも題材ですので、アンケートありきではありませんが、

●実態をどう把握するかにより、打つ手はもちろん変わってきますし、

●何よりもこの教育終了後、自組織に戻って、「私の組織のリスク」について

  職場を巻き込んで具体的に動いていく

 

研修は研修、現実は現実とさせないために、終了してから現実の中で変化を起こすためにも

自組織のリスクの実態を題材としています。

 

今回の「組織リスクマネジメント教育」では、組織体質からくる我が社のリスクだけではなく、

少子化、原材料の高騰、そして小売業の巨大化、PB商品の拡大など、食品メーカーを取り巻く環境の激変という外部環境からのリスクについても議論となりました。

 

組織リスクに限ったことではありませんが、教育で重要なことは

少しでもシャープな解を導き出すために知覚を研ぎ澄ます。 

また、どこまでを自分の範囲とし、どう関わっていくのかという自己関与力をつけることであると改めて感じました。

 

On the Business Training 協会 伊藤みづほ


先回の現場ドキュメントでお伝えした食品メーカー様から「リスク管理の研修を実施してほしい」というご相談をいただいてから、約半年後の5月、管理職の方を対象に『組織リスクマネジメント教育』第一弾が実施されました。

 

ご相談いただいた当初の目的は、

コンプライアンスに関して社内でできることは実施しているので、『不祥事やリスクに関する危機意識が高まる』研修を実施してほしいということでした。

 

「組織リスクの核は組織風土」

昨年秋から、内部統制室・経営企画部、そして人事部の方々と議論を重ねてきました。

食に関する不祥事が頻発する中、研修を実施しても問題が解決するのではなく、コンプライアンスに関する取り組みと並行して、社員の活力とモラル意識を高め、社員がリスクに自発的に低減・対応する企業風土を作り上げていくことが不可欠であるとし、全体像を描いていきました。

 

そのために、管理職全員を対象とした 「組織リスクマネジメント教育」では

① 企業経営に関わる様々なリスクと我が社のリスク

② 他社事例をもとにリスクの発生の構造と対処についての学習と自社俯瞰

③ 自組織におけるリスクの実態とその対策

をポイントに展開していきました。

 

 

①企業経営に関わる様々なリスクと我が社のリスク

我が社・自組織のリスクについて具体的に上げながら、我が社のリスクを議論していきます。

クロスファンクションで議論する中で、様々なリスクが実在する我が社の実態、またリスクに対する感受性の違いなどを浮かび上がり、共有化されていきます。

ある管理職の方がおっしゃった「いつ、不祥事が起きてもおかしくないぞ」という一言に、管理職の全員が頷いていました。

 

②他社事例から学び、自社・自組織を俯瞰する

不祥事が起きた実在する企業を題材に、その発生の構造を考えていきます。結果として不祥事が起きているので、その構造は自ずとわかりますし、その不祥事を分析した書籍や情報も多くあります。起きた不祥事の構造を理解することが大切なのではありません。

実際に起きた不祥事と我が社・我が組織・自分を照らし合わせ、

 

・他社事例はどの企業でも起こりうること。事故や不祥事野の原因には特殊性は何もない。

・不祥事が起きる過程はその時点で本当に間違いであったのだろうか。

 その時点において、業務改善を目的としての判断として、間違っていたと言い切れるだろうか

・今やっている自分達の"理にかなっている"やり方が、中長期的にはどうか

       ・

       ・

などのように、自社・自己俯瞰を深く繰り返していきます。

 

管理職の方々から、「不祥事が起きたから、間違いであったとわかるが、自分がもし、この会社の当事者であれば同じ判断をしたと思う」や「私の職場でも改善や効率化を図り、結果を出し、評価されているものがある。しかし、殆どのものが中長期的に考えた場合という視点では見ていない」、また「食を扱う我が社なのに、不良品の発生などに対する感性が弱くなっているのではないか」など様々な意見が出され、我が社、自組織のリスクに対して議論を深めていきました。

 

実際に起きた不祥事や事故の原因やメカニズムなどを分析し、理解することももちろん大切です。

しかし、最も重要なことは、それらの題材から学んだことを、どれだけ高い観点から、また広い視野で自社、自組織、また自分に俯瞰できるか。

 

OBTでは、この自社・自組織・自己俯瞰のプロセスこそが教育だと考えています。

 

 

On the Business Training 協会 伊藤みづほ

 

*続きは後編でどうぞ。
  
組織リスクマネジメント ③

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