現場ドキュメント: 2008年10月アーカイブ

去る9月30日(火)、東京商工会議所品川支部主催、OBT協会代表及川が講演を務めたセミナー『平凡な人財で非凡な成果を上げる~人財の採用・定着・戦力化を一連の流れで構築する~』。今回は前回に引き続きセミナーの様子(後編)をお届けいたします。

 

【採用-定着化のために必要な観点】

 多くの企業では「採用は採用」「教育は教育」などと言う様に、個々の機能がバラバラになってしまい、体系的に動いていない事態が見受けられるが、重要なことは"採用-定着化-戦力化"という仕組み/体系を自社の中に一貫して確立することである。

 また、仕事柄日々様々な企業に関わっているが、若手の人達に非常に多く見受けられる現象が3つほどある。

 ①早期退職
 ②モチベーシヨンの低下(入社当時は"やる気"に満ちていたが最近全く覇気が感じられない)
 ③成長停滞(精神面、能力・スキル面ともに伸び悩み)

 早期の退職理由としては、主に下記の要因が上げられる。
 ・仕事が自分に合わない、つまらない
 ・賃金や労働時間等の条件が良くない
 ・人間関係が良くない
 ・会社の将来性
 ・自分の将来のキャリア形成の見込みがない

 更にもう一つの要因として、採用募集時の企業側の説明と入社後のギャップというのが非常に大きいのではないだろうか。

 ・入社前のイメージと入社後の現実の間に大きなギャップが存在する
 ・入社後に自分が成長し、キャリアを積んでいける環境がない

若手社員に限らず、

 ・今の仕事の充実感

 ・今の仕事を続けることによる今後の成長の可能性

 ・今の会社で将来のキャリアがイメージできるか等、

人は成長を感じたい、満たしたいのである。

 若年者の高い離職率の問題を論じる際に、単に若年者の意識やその周辺に問題の所在を求め、対応策を講じるだけではなく「我が社のマネジメントの在り方そのもの」に着目しなければならない。


【戦力化のために必要な観点】

 将来の成長は「本人の資質に規定される」或いは「職場の上司の指導力」といった点で片付けられ、後は時折、外部団体の研修等によってお茶を濁している企業があまりにも多い。
 要は、組織として戦力化ということを全く放棄しているのである。「うちの社員は意識が低い」とか「主体性がない」と嘆いているだけの関係者があまりにも多いのだ。

戦力化のためには、

 

●OJTのプログラム化

若手の能力開発として最も活用されている手段はOJTである。
然しながら、プログラム化されていないOJTは、指導が場当たり的になる危険性があり、また担当する上司は仕事が忙しいと指導を後回しする可能性が高い。
若手に対する能力開発の成否は、そのOJTを担当する上司の質に大きく影響される。
若手のOJTが上手くいっていない企業では、若手だけに限らず、全ての階層でOJTが機能していない場合が多い。

 

●早期戦力化のための諸施策の体系化

入社6-7年後には、組織の中核として所属組織の課題を見出し、その課題を解決できる能力を備えた人財に成長させるためには、成長段階に応じた育成システムの体系化を図ることが重要である。人は、仕事経験や体験で力をつけ成長する。だからこそ、育成システムと合わせ、育成のために計画的な異動・ローテーションが重要となる。

"非凡な人財を育てたい"
"非凡な人財を組織に入れ、組織に留めたい"

多くの企業は、社員に非凡さを求めているが、そもそも企業経営とは「平凡な人を集めて非凡なことを

成し遂げる」「普通の人を集めて高い業績を上げる」ことをいうのではないだろうか。

---------------------------------------------------------


人財育成等の長期的な日々の積み重ねが会社を育てる。
隠れた投資が企業の明日の成長を支える。


      英国の経済学者   E・Tペンローズ

-----------------------------------------------------------

 

 

去る930日(火)、東京商工会議所品川支部主催のセミナーが開催され、OBT協会代表、及川が『平凡な人財で非凡な成果を上げる ~人財の採用・定着・戦力化を一連の流れで構築する~ 』をテーマに講演いたしました。参加者は約60名中、約6割が経営層の方々で、人財の定着・戦力化に対する関心の高さが窺えました。

 

 内需縮小、構造的な労働力の減少等、変化する時代における「人財」の価値とは。今回から2回に渡り、現場ドキュメントではこのセミナーの様子をご紹介致します。

 

【問われる人の価値】

 世界最速のスピードで減少し続けている日本の人口。60年後には労働人口が約3分の2になると言われています。内需も縮小の一途を辿り、国境を超え、業際を超え企業間の競争は従来よりも激化する事は避けられません。

 この状況に対応していくためには、企業は「人の能力をどれだけ生かせるか」ということを考えなければならない。なぜならば企業が市場に提供している価値、つまり商品やサービスを生み出している源泉は、まぎれもなくそこに所属する社員、「人財」であるから。

 人財のパフォーマンスを最大限に発揮させることが、企業経営において非常に重要なテーマになってきます。

 

【企業の実態】

 一見、経営がうまくいっているように見えても、内情は大病に侵されているという企業を多く見受けます。例えば、

●従業員が仕事や会社に満足していない

●会社の将来に希望が持てていない

●意欲の高い社員の退職が常態化している

●経営方針・経営施策が形骸化してしまっている

●現場に活力がない

●社員の不満や愚痴が多い......等々。

 業績や株価はあくまで一つの結果指標であって、重要なことはそれらがどのような組織体質によって生み出されているかである。

-活性化された風土、生き生きと仕事に取り組む人財から生み出されたものなのか。

-それとも保守的で経営施策が形骸化する風土、不平不満が蔓延し、会社の将来に希望や

 夢が持てない人財から生み出されたものなのか。

 

 いま今の結果指標に大差がなくても、中長期的にはこの差が企業の競争力に大きな影響を与えることは必至です。企業のレベルはそこに所属する人財のレベルに規定される。

企業のレベルが人財のレベルを超えることはできません。

 

【組織の失敗と学習】

 多くの企業では短期的テーマと長期的テーマを同じ土俵で論じてしまい、何をやっても成果に結実しない事態に陥っています。

 教育/人財育成は中長期的なテーマであり、日々の成果に直結する活動(設備の更新等)と同じ土俵で考えてしまっては、結実し得ません。例えば、三日間の教育で社員の意識が変わらないからといって「うまくいかない」と投げ出してしまうのは全くもって短絡的な考え方といえます。

 また、訪問先では「非凡な人財を採用したい」という要望もよく聞きます。しかし、組織というのは多くの非合理性があるもの。非凡な人間ほど、組織の非合理さ、組織にいることの非効率さをよく知っています。例え入社したとしても、リタイアして自分で事業を立ち上げてしまう事が往々にして起こりうるわけです。非凡な人財が入社してもマネジメントできるか、明確なキャリアを示せるか...非凡な人財を育てたい、採用して組織に留めたい、という理論はそれ相応の受け皿がなければ成立しない、この前提に立てるかどうかが重要です。

 少子化が進むこれからの時代、優秀な人財を採用するというのは、今まで以上に困難を極めます。「優秀な人財を採れない」と嘆くよりも、

■採用した人財を組織全体でいかに定着化させ、戦力化していくか

■平凡な人財を集めて、いかに非凡な成果を上げるか

 ということが企業経営に課せられた課題といえるでしょう。

 そこで、競争力の向上にあたっては、採用、定着化、戦力化という3つの概念を体系的に組み込んでいくことが大切です。

 

次回後編では、採用一定着化一戦力化のために必要な観点を具体的にご紹介します。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1

このアーカイブについて

このページには、2008年10月以降に書かれたブログ記事のうち現場ドキュメントカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは現場ドキュメント: 2008年9月です。

次のアーカイブは現場ドキュメント: 2008年11月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。