OBT 人財マガジン

2008.10.15 : VOL54 UPDATED

人が育つを考察する

  • 9月30日 東京商工会議所 

     

    去る930日(火)、東京商工会議所品川支部主催のセミナーが開催され、OBT協会代表、及川が『平凡な人財で非凡な成果を上げる ~人財の採用・定着・戦力化を一連の流れで構築する~ 』をテーマに講演いたしました。参加者は約60名中、約6割が経営層の方々で、人財の定着・戦力化に対する関心の高さが窺えました。

     

     内需縮小、構造的な労働力の減少等、変化する時代における「人財」の価値とは。今回から2回に渡り、現場ドキュメントではこのセミナーの様子をご紹介致します。

     

    【問われる人の価値】

     世界最速のスピードで減少し続けている日本の人口。60年後には労働人口が約3分の2になると言われています。内需も縮小の一途を辿り、国境を超え、業際を超え企業間の競争は従来よりも激化する事は避けられません。

     この状況に対応していくためには、企業は「人の能力をどれだけ生かせるか」ということを考えなければならない。なぜならば企業が市場に提供している価値、つまり商品やサービスを生み出している源泉は、まぎれもなくそこに所属する社員、「人財」であるから。

     人財のパフォーマンスを最大限に発揮させることが、企業経営において非常に重要なテーマになってきます。

     

    【企業の実態】

     一見、経営がうまくいっているように見えても、内情は大病に侵されているという企業を多く見受けます。例えば、

    ●従業員が仕事や会社に満足していない

    ●会社の将来に希望が持てていない

    ●意欲の高い社員の退職が常態化している

    ●経営方針・経営施策が形骸化してしまっている

    ●現場に活力がない

    ●社員の不満や愚痴が多い......等々。

     業績や株価はあくまで一つの結果指標であって、重要なことはそれらがどのような組織体質によって生み出されているかである。

    -活性化された風土、生き生きと仕事に取り組む人財から生み出されたものなのか。

    -それとも保守的で経営施策が形骸化する風土、不平不満が蔓延し、会社の将来に希望や

     夢が持てない人財から生み出されたものなのか。

     

     いま今の結果指標に大差がなくても、中長期的にはこの差が企業の競争力に大きな影響を与えることは必至です。企業のレベルはそこに所属する人財のレベルに規定される。

    企業のレベルが人財のレベルを超えることはできません。

     

    【組織の失敗と学習】

     多くの企業では短期的テーマと長期的テーマを同じ土俵で論じてしまい、何をやっても成果に結実しない事態に陥っています。

     教育/人財育成は中長期的なテーマであり、日々の成果に直結する活動(設備の更新等)と同じ土俵で考えてしまっては、結実し得ません。例えば、三日間の教育で社員の意識が変わらないからといって「うまくいかない」と投げ出してしまうのは全くもって短絡的な考え方といえます。

     また、訪問先では「非凡な人財を採用したい」という要望もよく聞きます。しかし、組織というのは多くの非合理性があるもの。非凡な人間ほど、組織の非合理さ、組織にいることの非効率さをよく知っています。例え入社したとしても、リタイアして自分で事業を立ち上げてしまう事が往々にして起こりうるわけです。非凡な人財が入社してもマネジメントできるか、明確なキャリアを示せるか...非凡な人財を育てたい、採用して組織に留めたい、という理論はそれ相応の受け皿がなければ成立しない、この前提に立てるかどうかが重要です。

     少子化が進むこれからの時代、優秀な人財を採用するというのは、今まで以上に困難を極めます。「優秀な人財を採れない」と嘆くよりも、

    ■採用した人財を組織全体でいかに定着化させ、戦力化していくか

    ■平凡な人財を集めて、いかに非凡な成果を上げるか

     ということが企業経営に課せられた課題といえるでしょう。

     そこで、競争力の向上にあたっては、採用、定着化、戦力化という3つの概念を体系的に組み込んでいくことが大切です。

     

    次回後編では、採用一定着化一戦力化のために必要な観点を具体的にご紹介します。