OBT 人財マガジン

2008.10.29 : VOL55 UPDATED

人が育つを考察する

  • 9月30日 東京商工会議所 開催セミナー

    去る9月30日(火)、東京商工会議所品川支部主催、OBT協会代表及川が講演を務めたセミナー『平凡な人財で非凡な成果を上げる~人財の採用・定着・戦力化を一連の流れで構築する~』。今回は前回に引き続きセミナーの様子(後編)をお届けいたします。

     

    【採用-定着化のために必要な観点】

     多くの企業では「採用は採用」「教育は教育」などと言う様に、個々の機能がバラバラになってしまい、体系的に動いていない事態が見受けられるが、重要なことは"採用-定着化-戦力化"という仕組み/体系を自社の中に一貫して確立することである。

     また、仕事柄日々様々な企業に関わっているが、若手の人達に非常に多く見受けられる現象が3つほどある。

     ①早期退職
     ②モチベーシヨンの低下(入社当時は"やる気"に満ちていたが最近全く覇気が感じられない)
     ③成長停滞(精神面、能力・スキル面ともに伸び悩み)

     早期の退職理由としては、主に下記の要因が上げられる。
     ・仕事が自分に合わない、つまらない
     ・賃金や労働時間等の条件が良くない
     ・人間関係が良くない
     ・会社の将来性
     ・自分の将来のキャリア形成の見込みがない

     更にもう一つの要因として、採用募集時の企業側の説明と入社後のギャップというのが非常に大きいのではないだろうか。

     ・入社前のイメージと入社後の現実の間に大きなギャップが存在する
     ・入社後に自分が成長し、キャリアを積んでいける環境がない

    若手社員に限らず、

     ・今の仕事の充実感

     ・今の仕事を続けることによる今後の成長の可能性

     ・今の会社で将来のキャリアがイメージできるか等、

    人は成長を感じたい、満たしたいのである。

     若年者の高い離職率の問題を論じる際に、単に若年者の意識やその周辺に問題の所在を求め、対応策を講じるだけではなく「我が社のマネジメントの在り方そのもの」に着目しなければならない。


    【戦力化のために必要な観点】

     将来の成長は「本人の資質に規定される」或いは「職場の上司の指導力」といった点で片付けられ、後は時折、外部団体の研修等によってお茶を濁している企業があまりにも多い。
     要は、組織として戦力化ということを全く放棄しているのである。「うちの社員は意識が低い」とか「主体性がない」と嘆いているだけの関係者があまりにも多いのだ。

    戦力化のためには、

     

    ●OJTのプログラム化

    若手の能力開発として最も活用されている手段はOJTである。
    然しながら、プログラム化されていないOJTは、指導が場当たり的になる危険性があり、また担当する上司は仕事が忙しいと指導を後回しする可能性が高い。
    若手に対する能力開発の成否は、そのOJTを担当する上司の質に大きく影響される。
    若手のOJTが上手くいっていない企業では、若手だけに限らず、全ての階層でOJTが機能していない場合が多い。

     

    ●早期戦力化のための諸施策の体系化

    入社6-7年後には、組織の中核として所属組織の課題を見出し、その課題を解決できる能力を備えた人財に成長させるためには、成長段階に応じた育成システムの体系化を図ることが重要である。人は、仕事経験や体験で力をつけ成長する。だからこそ、育成システムと合わせ、育成のために計画的な異動・ローテーションが重要となる。

    "非凡な人財を育てたい"
    "非凡な人財を組織に入れ、組織に留めたい"

    多くの企業は、社員に非凡さを求めているが、そもそも企業経営とは「平凡な人を集めて非凡なことを

    成し遂げる」「普通の人を集めて高い業績を上げる」ことをいうのではないだろうか。

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    人財育成等の長期的な日々の積み重ねが会社を育てる。
    隠れた投資が企業の明日の成長を支える。


          英国の経済学者   E・Tペンローズ

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