今回の現場ドキュメントは、前回に引き続き、
「変革」をテーマに実施したプロジェクトをご紹介します。
後編では特にトレーニングを通じて、参加者がどの様に気づきを得たかについて
お伝えします。
● トレーニングの目的と5つの訴求点
トレーニングの目的を「10年後、当グループが生き残るために」という一点に絞り、
次の5つの訴求点で構成しました。
次の5つの訴求点で構成しました。
【10年後、当グループが生き残るために】
テーマ② 企業の成長と衰退
テーマ③ 当グループの将来像の検討
テーマ④ 当グループの現状と課題
テーマ⑤ 変革に向けて

※実施した内容全てをご紹介する事はできませんので「参加者の気づき」と言う観点から、
成果に繋がった上で、重要となったポイントをご紹介したいと思います。
● 人は現状を認識して初めて変化(=学習)する
「人は新しい知識を得たから変わるのではなく、自分、自社のおかれている現状を
認識する事で初めて変化(=学習)する」
このことを多くの企業では理解していない、または実践できていない様に思います。
というのも「新しい知識をインプットすれば社員が変わる」という傾向が、
未だに強いからです。
最新のビジネスフレームワークや、先進企業の事例を知れば、
社員がそれを実践してくれる訳ではありません。
厄介なのは、人は誰しも「見たい現実しかみていない」と言う現実。
外部が入る価値は「見たくない現実をどれだけ、納得性を持って、
参加者に受け入れてもらえるか」と言う点が非常に重要となります。
例えば、今回のトレーニングに向けて、私どもでは事前に同社及び、
同社が取り扱う製品に関する、市場調査を実施しましたが、結果は、
参加者が思っていたものとかけ離れたものでした。
業界シェアではトップ3に入る同社ですが、調査結果を題材に、
トレーナーと議論を交わす中で、次の様な事を、参加者は学び取っていきます。
・ 「我々は『ブランド』と思っていたが、消費者は全くそのようには感じて
いない。そもそも『ブランド』自体に関心が薄れてきている」
・ 「自社製品が他の機能を持った商品に代替され始めている」
・ 「『良い商品を作れば売れる』という考え自体、時代錯誤」
・ 「当社の製品は『技術は優れている』という回答が多かったが、
技術の標準化が起きる中で、これからも競争優位性として捉えるのは危険」
人が学習する上では、見たくない現実を直視する事が欠かせませんが、
成功体験を持っていればいる人ほど、これを拒みます。
顧客企業の現実の課題について議論を繰り返す中で、
「参加者自身が固定概念を打破していける環境」を作り出す事に、
トレーナーが介入する価値があるのです。
● 「当事者」を育成する
グループ、自社の課題が見えてきた後、問題となるのが「これは誰の問題か」という事です。
・ 「今までの会社の体制が悪かったから...」
・ 「上司に言っても、結局聞き入れてもらえないんじゃないかな...」
・ 「それはわかるけれども、実際問題、うちでは難しいのでは...」
議論が進むうちに、この様な会話も聞こえてきます。

「しかしながら、その様な問題を感じ取っていたにもかかわらず、
行動しなかった、放置していた我々自身には、本当に問題はなかっただろうか」
と言う投げかけをしていくうちに、参加者は、問題の原因の矛先を、
自分自身へ向ける様に変化していきます。
「自社の課題を上げて下さい」というと、
ホワイトボードを埋め尽くすほどの意見は出ますが、
「それを解決するのは誰ですか」と言う投げかけには皆が皆口を閉ざします。
「意見はあっても意志がない」
トレーナーの一言に、参加者は我が身を振り返ります。
終盤に近づいたとき、参加者から印象的な発言が出ました。
・ 「今まで、私は言葉では格好よく『今のままではダメだ』『改革が必要だ』と
言っていましたが、自分で自分の体にメスを入れて、
痛みに耐える勇気がありませんでした」
「我々が立ち上がれば、時間はかかっても、必ず自体は好転する」
今まで多くの変革に携わってきたトレーナーが、参加者の可能性を信じて、
真剣に議論を重ねていくと、参加者に当事者としての意識が芽生えていきます。
二回に分けて「若い力が変革を担う」と言うテーマでお届けしましたが、
まとめ
二回に分けて「若い力が変革を担う」と言うテーマでお届けしましたが、
日々多くの企業に御伺いする中で、この必要性はますます高まっている様に感じます。
日本の経済状況、社会情勢を見て暗澹たる気持ちになるのは仕方がありませんが、
しかしながら、これを背負って生きていかなければならない現実があります。
こういうときだからこそ、グループ(会社)全体、事業全体を見渡せるシャープな思考と、
現状を打破していくために具体的に行動していけるパワーを持った、
「若い力」に投資する事が必要なのではないでしょうか。
● 最後に...
本トレーニング終了時に、ある参加者が、他のメンバーに発したメッセージが
とても印象的だったので、それをご紹介して、終わりたいと思います。
・ 「皆さん、聞いて下さい。今回、選抜"若手"トレーニング、と言う事で、
自分も参加しましたが、私が今回、最も学習した事は、
『もう若手と言う意識を捨てなければならない』と言う事です。
中堅社員として、当事者として、会社を改善していく動きの
担い手にならなければ行けないのだと、感じています。
これを機に、グループ各社間の人的な繋がりを増やし、
会社をよりよい方向へ向けてムーブメントを起こせる様に、
連携を深めていきましょう」