OBT 人財マガジン

2006.11.29 : VOL12 UPDATED

OBTカフェ

  • その場しのぎの採用策が生み出すもの

    採用難といわれる今だからこそ、「我が社のポリシー」を持つことが大切である。

    少子高齢化の影響から早くも新卒の採用が多くの企業で難しくなってきている。
    そのためか,採用に関わる側もあの手この手で若者を誘引するための手法が考えだされているようである。
    例えば、内定者に海外旅行や資格取得の学習に要する補助金の提供等いろいろなアイデアを考えだされ、就職を希望する学生にとっては極めて優遇された幸せな状況にある。

    一方で学生は、就職活動に際して、条件のいい会社を探す。
    「自分が何をするかではなく、会社が自分に何をしてくれるか」を調べる。

    そして自分の思うようにいかない状況に出会うと「ここよりももっと自分にあったいい会社がきっとあるはずである」と心ここにあらずで「遠くの方を眺め、ひそかにもっといい会社探しをしている」のである。

    さらに学生だけでなくその会社の社員も「ここよりももっと自分にあった条件のいい会社がないだろうか」と就職情報サイトを見る。

    「上司が何もしてくれない、会社が何もしてくれない、社会が、国がと」自分は何もしないで状況や周囲のせいにして不満を言う人は、非常に多い。

    その一方で、日本を代表する"あるハイテク企業"では、新入社員に一年間トイレ掃除をさせているそうである。
    「私はトイレ掃除をするためにこの会社に入ったのではない」と言って退職する人達が毎年30%以上もいるという。

    しかしながら、この会社の社長は「この制度は我々のポリシーであってこれが嫌な人は辞めてもらって結構」と全くひるむ様子はないという。
    「掃除、整理、整頓、清潔、しつけ等を5Sというが、これが社会人の基本であり、この基本が出来ない人は、仕事が出来ないし我が社の人材とはなりえない。
    5Sの入り口がトイレ掃除であり、これを嫌がる人は当社ではお断りである」と。
    「裏表なく、汗を流し、体を汚して掃除に先頭を切って取り組む社員を優遇する」というポリシーとのことである。

    学生を採用したいために、"その場しのぎの策"の提供に躍起となっている企業、"いい条件探し"に終始している学生達...。このようなやり方が、企業にとって将来、本物の戦力となるビジネスマンを育てることにつながるのか。これから社会に出て、自分の力でとてつもなく長い「人生」という時間を生きて抜いて行かなければならない学生達の将来にとって、本当に幸せといえるのだろうか。

    「採用難」といわれ、「良い採用をするために」というサービスが非常に多い今だからこそ、「我が社のポリシーを持つこと」「それらを、自分の目で見極めること」が、重要なのではないだろうか。
    答えは外部が見つけてくれるのではない。自社の中で、自分たちの手で見つけ出さなければいけない。


                                                 OBT協会  及川 昭