OBT 人財マガジン

2007.04.10 : VOL20 UPDATED

OBTカフェ

  • 「働かざるもの食うべからず」

    津軽三味線は100年ほど前に青森県津軽地方で誕生した。
    当時、盲目ともなると生き方は旅芸人しかなかった。一軒一軒門付けしながら放浪し、その日の糧を得ていた。明治から大正、昭和の初期にかけて男盲芸人たちは、その日の糧を得るために一軒一軒門付けをしながら三味線を弾き、厳しい風雪や社会の差別に耐えながら生きてきた。それは生活のための、まさに生きるために弾いた三味線だった。悲しい運命を背負った先人たちによって、その奏法と生命は引き継がれてきた。

    津軽三味線の名人と称えられている高橋竹山は津軽三味線奏者で戦後全国、そして世界に津軽三味線を広めた第一人者である。彼もまた2歳のころ、麻疹をこじらせて半失明し、22、3歳のころ完全失明となった。

    「働かざるもの食うべからず」。誰もが一度は聞いたことがあるであろうこのフレーズ。この言葉が聖書からきていると知って驚いた。もちろん世の中にはリストラで働きたいが仕事がないという人もたくさんいる。病気や怪我などの身体的理由で働くことができない人もたくさんいる。
    この言葉は人間社会に限らず、生物としてのあたり前である。動物に限らず草木であろうと厳しい自然環境や外敵に打ち勝って、はじめて生き延びることができ子孫を残すことがでる。

    近年日本の社会問題となっている「ニート」。私は今年1月まで2年間ブラジルで生活をしていた。そしてこの4月から社会人になったばかり。2年ぶりに日本に帰ってきて驚いたことはたくさんあったが、その中でもこの言葉には最も驚いた。

    学校にも行かず、働いてもいないし、職業訓練にも参加していない若者を意味する。Not in Education, Employment or Trainingの略語。1990年代末のイギリスで生まれた言葉が日本でも使われるようになったという。

    企業が即戦力を求める一方、新卒採用の数を絞った結果、就職が難しくなったためと見られるこの現象。国勢調査のデータを基にしたニート層の年齢別分布を見ると、19歳と23歳が多く、この人たちは高校や大学を卒業したものの就職できず、あきらめてしまった若者と考えられる。

    厚生労働省が発表した2004年版『労働経済の分析』(労働経済白書)でニートに相当する人の数を初めて集計した結果、2003年では52万人に達していることが分かった。現在ではその数はより多くなっていることだろう。労働人口が減少していく中で、52万人は大きい。
    国にとっての資源である労働力が減るわけだから、経済成長率を下げる要因になる。本来なら社会保険料を払うはずの若者が、逆に生活保護を受ける立場になりかねず、財政の悪化も懸念される。さらに、薬物や犯罪に手を染めるなど社会問題の当事者となる可能性が高いことも問題点であると専門家は指摘する。

    「なぜ働くのか」「仕事をするとはどういうことか」その価値観は人それぞれ違う。しかし、その根本にあるものは全ての人間に共通する。つまり、「食べること」であり、「家族を養うこと」である。
    その昔、「働くこと」は「生きること」であった。「働く」とは「生きること」であり、「生きる」とは「働くこと」であった。生きるために獲物を捕り、米や作物を育てた。それを怠るということは直接「死」と結びついた。
    これは何も大昔の話ではない。日本においてもたった数十年前のこと。今もどこかで今日の食べ物を得るために必死になっている人間はたくさんいる。

    われわれ若者はもっと「働く」ということに貪欲にならなくてはいけない。


                           OBT協会 伊藤 誠司