OBT 人財マガジン

2008.09.10 : VOL52 UPDATED

OBTカフェ

  • 人事プロフェッショナルへの提言 ~企業と人との関係~

    (1)人事管理の移り変わり


    経済環境が、ヒトと組織に与えるインパクトは何かを明確にし、人事部は「わが社をどの方向に導くのか」を決断しなければならないでは、人事部機能は時代とともにどのように変遷してきたのかを見てみよう。


    『1960年代から70年初頭』
    高度経済成長時代である。この時代は同時に、高インフレの時代でもあった。
    人件費をコストコントロールするため、給与構成の中に手当や給与を含めるという習慣が確立する。また、ベアは仕方ないとしても、それがすべて退職金に跳ね返ったのでは退職金負担が急増するため、退職金からのベア引き離しが制度化された。
    この時代の人事部の機能は、コストをいかにコントロールかであった。


    『1970年代』
    1973年に、第1次オイルショックが起こった。
    企業の成長が止まった結果、ポスト不足が、強い序列意識をインプットされたサラリーマンにとって、モラル・モチベーションのダウンにつながる。
    人事部はこの対策として、資格制度を導入し、資格と役職を分離することにより、ポストの増加による組織の硬直化の回避をはかった。
    この時代の人事部の機能は、いかにして、モラル・モチベーションダウンを回避し維持するかであった。
    『1980年代』
    80年代に入り日経連が定義した「職能とは、あくまで職務遂行能力のことで、職務と関係のない能力は除外される」「職務遂行能力とは当該企業が経営上必要とする職務の遂行を通じ発揮する能力のことである」という概念が一般的になった。これをきっかけに能力主義が標榜され、能力給が主流となる。
    80年代後半以降は、年俸制やMBO(Management by  Objectives::目標管理)が登場し
    てきた。実力をシンプルに反映する給与体系を確立した。
    この時代の人事部の機能は、ホワイトカラーのモラル管理であった。


    『1990年代』
    90年代はブルーカラーとホワイトカラーの比率が60年代と比べて逆転。
    人事部の機能としては、ホワイトカラーのコスト管理をどうするかという問題と、ホワイトカラーの中で新しい時代を切り開くコア人材をいかに確保し、育成するかが大きな課題となった。


    『2000年代』
    成果主義の台頭により、人事部は経営とのコミットメントの中でその存在価値が認められてきた。日本企業の人事担当役員の60%は専務取締役ないしは常務取締役であったと報告されている。経営と人事が極めて緊密化しつつあるかを物語っている。
    2000年代は、経営人事が主要テーマとなる時代である。

    以上でお分かりのとおり、人事部はその時々の企業を取り巻く環境の変化に応じて、その果たすべき機能を変えながら人と組織を運営をしてきたのである。

    On The Business Training 協会 栗田 猛