OBT 人財マガジン

2010.04.07 : VOL89 UPDATED

OBTカフェ

  • 変わらないものにも新しい風を

    一説には、国内旅館の9割以上が赤字経営だとも言われている。
    景気の低迷が続く現代は、旅館やホテル業界にとっても厳しい時代。
    老舗と呼ばれる旅館にも再編の波が押し寄せている。

     

    歴史ある宿泊施設が次々に廃業へと追い込まれるなか、順調に増収を重ねて

    いる施設もある。
    創業100年を超える温泉旅館「星野旅館」から、一大リゾートとして見事な再生を

    遂げた「星野リゾート」が代表的なそれだ。


    昔ながらの旅館サービスから一転、24時間のルームサービスやいつでも好きな

    時間に摂れる朝食など、客目線に立った新サービスを積極的に取り入れ、成功を

    果たした。
    「時間にとらわれない、ゆったりとした空間を提供したい」、と客室には時計も

    テレビもないが、非日常を体感できるリゾート空間として、大きな反響を呼んでいる。
    なかには、70連泊していった客もいるというから驚きだ。

     

    社長の星野氏は、今やリゾート再生のカリスマ的存在。
    家業の旅館だけでなく、山梨・小淵沢のリゾナーレや福島・磐梯のアルツリゾート

    など全国のリゾートを次々に再建した実力者として知られている。
    徹底したマーケティングリサーチや明確なコンセプト作りも然ることながら、星野氏の

    再生手法には必ず人財育成も含まれるという。
    「従業員のやる気と自主性を引き出すことこそが最終目的」と星野氏。
    最も重要なのは、"箱"ではなく、やはり"魂"の部分にあるようだ。

     

    旅館業に限った話ではないが、老舗だからといってあぐらをかいてはいる時代は

    終わった。
    伝統的なサービスを軸として残しながらも、新しいアイディアを柔軟に取り込んで

    いくことこそが生き残りの鍵。
    世の中の風を読み、変わり続けていくことこを拒んでいては、もはや不況を乗り切る

    ことはできないのである。