OBT 人財マガジン

2010.06.09 : VOL93 UPDATED

OBTカフェ

  • 良い物を、長く

    「この夏、購入したいファッションアイテム」の一位は「ワンピース」。
    あるショッピングモールが独自に行ったモニターアンケートの回答だ。
    驚くべきは、その購入予算。
    「予算は3,000円まで」という回答の多さに、正直、衝撃を覚えた。
    百貨店で買おうものなら、倍どころか、恐らく3倍、4倍の予算が必要であろう。
    まさしく、ファストファッションの浸透を痛感するアンケート結果であった。

    ショッピングモールの売り場を覗いてみると、あるショップではワンピースが実際に
    2,980円で販売されていた。
    Tシャツは980円、薄手のロングコートも4,980円――MADE IN CHINA。
    デザインもトレンドを意識した作りで、かわいいものばかりだ。
    あれも、これも購入したくなる気持ちがわかる。
    が、素材や縫製に関しては値段相応、といった感が否めない。
    安さは魅力的ではあるが、何シーズンも繰り返し着用するとなると、
    やや不向きかもしれない。

    デフレ不況が進み、アパレル業界にも大量生産・低価格路線の波が押し寄せて
    いるが大手下着メーカーGUNZEは、創業以来"国内生産"を貫いているという。
    元々製糸工場から始まったという同社は、戦後に下着メーカーとして発展。
    創業110年を超える老舗企業でもある。
    男性下着の分野で業界シェアのトップを走り続けるものの、最近では若い顧客層が
    つかめず悩んでいたそうだ。

    そんな折、この2月に、若者の街・原宿にオープンさせたのが、直営の下着専門店
    「ボディワイルド」だ。
    店内には、これまでの「地味」なイメージを払拭する、カラフルでデザイン性のある
    商品がずらりとディスプレイされている。
    実に10年ぶりのモデルチェンジというが、肌ざわりの良さや履き心地は変わらない。
    アーティストとのコラボパンツといった、ポップで個性的なデザインの商品も
    充実している。
    さらに目をひくのが、自分好みのオリジナルパンツが作れる「カスタムパンツ」コーナー。
    自在に選べる色やデザイン、腰ゴムやポケットなどの組み合わせは、
    100万通りにも上るとか。
    カスタムパンツは1枚2,100円、2枚で3,150円。
    決して"安い!"とは言い難いが、オンリーワンにこだわるオシャレな若者からの
    評判も上々だという。

    ファッションアイテムは"使い捨て"と割り切ってオシャレを楽しむ――これも時代の
    潮流なのかもしれないが、こだわって選んだ物ほど、「大切に使いたい」と思うもの。
    不況が長引くこのご時勢だからこそ、「良い物を長く」という精神を忘れたくはない。
    パンツのような消耗品の類でも、きちんとした生地や縫製の物であれば、結果的に
    長持ちするというものだ。
    安い物を何度も買い替えるよりも、案外安上がりだったりして――。