OBT 人財マガジン

2010.11.10 : VOL103 UPDATED

OBTカフェ

  • ヒットの裏に感じる"心"

    ランドセルの幅を1センチ大きくしたところ、売り上げが2倍近く伸びているブランドがある
    という。来春からの脱ゆとり教育を前に、A4クリアファイルがすっぽり収まるサイズのラ
    ンドセルを開発したのだそうだ。業界内には「1枚のクリアファイルのために、むやみに
    大きくするべきでない」という声もあるそうで、"大きな"ランドセルを販売するのではなく、
    "小さな"ファイルを配布することで応戦するメーカーも現れている。両者の賛否はさてお
    き、以前から「A4ファイルがまっすぐに入らない」という消費者からの不満の声が寄せら
    れていたということや、今回の売り上げ増の実績などから見ても、ヒット商品を生み出す
    うえで、消費者の声というものがいかに重要なものなのかということが伺える。「A4ファ
    イルが入らない」という声を、最初に拾い上げた担当者にまず拍手をおくりたい。

    「お客様からのクレームや要望は、成長のきっかけとなる宝であふれている」と、積極
    的に消費者の声に反応する企業が増える一方で、商品を買う立場、サービスを受ける
    立場に立ったとはとても思えない企業も存在する。

    たとえば、先日、使ったあるタクシー会社には本当に驚いた。深夜の乗車だったのだが、
    信号無視や急停車は当たり前。道の確認もないまま目的地から遠ざかるわ......。挙げ
    ればキリがないが、あまりの態度に改めて説明をする気も失せ、「もう、この辺りでいい
    です」と告げると、大通り車道でここで降りろとばかりに急停車。挨拶もなしに急発進で
    去っていく後ろ姿を呆然としながら見送った。これまでの人生の中で、まさに最低最悪
    の接客と言っていい。やんわりとではあるが、会社のHPに、「因縁ではなく、乗務員に
    非がある場合はご連絡ください」と書かれていたのにも驚いたが、「苦情はこちらまで」
    というアドレスに送ったメールが宛先人不明で舞い戻ってきた瞬間に、二度目の利用は
    ないと確信した。流しのタクシーの場合、同じ乗務員と出合うことは恐らくないのかもし
    れないが、「二度と会わないから」という理由でずさんな対応をとっていいものか。こうい
    う評判ひとつひとつの積み重ねが、会社の信用につながっていくのだと改めて感じた出
    来事であった。

    物が売れない時代でも、ヒット商品や好調企業は確実に存在する。品質や技術は然る
    ことながら、いい商品、いいサービスに"心"を感じてしまうのは私だけだろうか。買う立場
    に立って作られた商品や、受ける立場に立って考えられたサービスというのは、相手の
    心にもきっと響く。