OBT 人財マガジン

2010.05.12 : VOL91 UPDATED

編集後記

  • 方針の実効を上げるために

    今回の「この人に聞く」、安藤総支配人のインタビューを拝見すると、
    富士屋ホテルでは方針(ハード)を運用する"ソフトの部分"、
    つまり、人や組織をとても重要視しているように思います。


    同社では社員各々に期待する「役割」と「成果」を伝え、
    人事考課で期待に対する達成の度合いを評価の対象としています。


    「全体方針を発表した次には、管理職に対して、各人に期待することを
    ...具体的に一人ひとり紙に書いて、私から直接渡します」
    と、語る安藤総支配人。


    管理職、また各職場の現状、大元となる富士屋ホテル全体の実態を
    きちんと把握していなければ、具体的な"期待"は書けません。


    日々の仕事を通じて思う事は、様々な方針は
    キャッチコピー的にきれいな言葉でまとめられているものの、
    それを動かす側、つまり人、組織の状態がないがしろにされ、
    方針等と運用する側との間に相当な距離があるということです。


    今回のインタビュー中の言葉をお借りすれば、
    多くの組織においては、方針を通じて社員に何を"期待"しているのかが、
    十分伝わっていない様に思えます。


    伝わっていない企業は、例えば、次の様な点が不足しているように感じます。


    ①作られた方針が現場の現状を踏まえているかどうか
    例)方針が一部の人たちだけで作られ、運用側にとっては
    強制的なノルマとして映っている


    ②浸透させるための施策や仕組みが現場にフィットしているかどうか
    例)上位下達で通知されるだけで、運用側には心理的な抵抗が生じている


    ③方針を浸透させるプロセスをきちんと踏んでいるかどうか
    例)書面を伝達するだけに止まり、その背景や意図は企画側や上位者から
    時間をかけて、丁寧に説明されていない


    社員に何を期待しているかが不明瞭なまま、また、
    実効が上がらない原因を明確にしないまま、結果として、
    例えば「うちの管理職は云々...」といったあいまいな理由で、
    様々な研修がその処方箋として施されている事態も数多く見受けられます。


    導入すれば自社の課題が解決するような秘策はありません。


    諸施策の"見た目"を気にする前に、まず、我が社のソフト構造(人、組織の状態)を
    見極め、我が社の人財、組織に対して、具体的に「何を期待しているのか」を明確にし、
    実現に向けて地道なプロセスを歩むことが重要なのではないでしょうか。

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