OBT 人財マガジン

2012.12.12 : VOL153 UPDATED

編集後記

  • 【OBT協会セミナー】 "賢慮な人財とは"のまとめ

    OBT協会では11/30(金)に、「企業の成長と衰退」を分ける、"リーダーや人財の賢慮さ"をテーマに東京丸の内、丸ビルにてセミナーを開催いたしました。


    このセミナーは、9月と11月に名古屋で開催しご好評いただき、関東地区の企業様からも東京での開催のご要望を頂きましたので、急遽、今回の開催に至ったものであります。
    37社39名のご参加をいただきましたが今回はお席に限りがあり、ご応募頂いた多くの方の希望に沿えない結果になってしまった為、編集後記の場を使い、セミナーの内容を簡単にご紹介させていただきます。


    しかしながら、今、何故こんなにも賢慮な人財に関心が注がれているのでしょうか?


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    何故、賢慮な人財が必要とされるのか


    それには、まず基本的に押さえておかなければならない考え方があります。第二次世界大戦後の成長を支えてきた国内市場は今後、「成長しない市場/縮小市場」であるということ。
    単年度では上がったり下がったりすることはあっても、長期的にみた場合はもはや成長等あり得ないという事実です。


    そして、このような状況の中では、問題を抱え込んでじっと耐え忍んでいつか時間が解決してくれるということはもう起きません。従来の発想を変えられず、根拠のない展望にすがっていると大変な状況になるのです。


    未だに耳にする発言で、「我々は技術力では負けていない。海外の製品なんて所詮日本のモノマネ」「安かろう、悪かろうの製品に負けているなんて」等の発言が目立ちますが、これは本当の意味で自分たちの企業が世界中で進行する大変化の渦中にいるということを全く実感できていないということを示す象徴的な考え方なのではないでしょうか。要は、これはいずれも自分達の状況が全く見えていなく、俯瞰出来ていないのです。


    そういった中で、OBT協会では、企業組織を動かしているリーダーや働いている人達の考え方そのものに問題があると考えています。要は、組織内において思考停止が起こっているのです。我々人間は、非常に困ったことに、「見たくないことは見ない」「聞きたくないことは聞かない」「考えたくないことは考えない」「発生頻度が低いことは起こらないことにしてしまう」という特性があるのです。


    誰しもそうなのですが、"これまでと同じやり方"を継続することが非常に楽であるし、慣れ親しんでいるから安心できる、新しいやり方を取り入れても成功するという保障もない等。よほど困った状況になったり、苦しいことに遭遇しないと、従来と同じ道を進みたがります。そして、個人でも企業でも最悪の事態に直面してはじめてそれと向き合うことになるのです。


    しかしながら、賢慮である人財は、そういったことが事前に『見えている』のだと考えます。


    OBT協会が考えている賢慮とは


    例えば、企業経営において想定外の出来事というと「経営破綻」或いは「倒産」という事態があると思いますが、これを不可抗力と片付けていいのかということです。

    経営というのは、まさに想定外をつぶしていく仕事であり、その時に必要となるのが、「先を見通す力」です。


    "将来は予測出来ないが、創ることは出来る"


    そこで、OBT協会では、そういった将来の目に見えないものであっても、新しい知識と現場での多様な経験を有することによって、未来を想定し、能動的に作り上げることが出来ると考えます。
    その考えられる人物こそが、賢慮な人財なのではないでしょうか。

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    つまり、賢慮さというのは履歴書には、表現出来ない能力なのです。


    数学を学ぶようには、学べない能力であり、それは、ある公式に当てはめて答えを導き出すといった類のものとは明らかに異なるからです。


    それ故、賢慮さとは、「予め」正解という具体的な回答を得るように簡単には「学ぶ」ことができないものなのです。然しながら、個別の業界の専門的知識やスキルを超えた極めて汎用性の高い実践的な能力といえます。


    賢慮な人財を育成するためには


    賢慮さを身につけるための「学習」は、「想定の枠内」の積み上げ的な「学び」だけをするのではなく、その枠を超える「学び」の能力が必要となります。


    そこで、まずは、賢慮な人財を育成する学習方法について、我々が、最も重要視しているポイントをご紹介致します。


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    「高い観点から自社を、自社事業を、自分たちを俯瞰する力」を養う、またより高い観点から自社や自社事業を俯瞰し、より客観的に現状を認識し、課題を修正していくという学習です。


    より高い観点から、自社、我々の事業、我々がやっていることを見たら、「一体何が見えるか?」、「どのように見えるか?」もしかしたら、業界の大方の戦い方ではなく、極めて非合理な戦略が見えてくるかもしれません。しかしながら、その一見して非合理な戦略ことが、変化の中ではある種の合理性を獲得していくのです。


    例えば、我々の人財マガジンでもご紹介させていただいた、東京23区内では本数や料金に限らず配達料は無料を始めた酒販業のカクヤス、保険料の原価と手数料を開示し、低価格な保険を目指すライフネット生命保険、過疎地で高度医療を提供する亀田メディカルセンター等、一見して非合理な事を取り入れています。


    合理的な要素だけで組み立てた戦略で競争している企業は、それが合理的であるがゆえに、すでに競合も手をつけていて、決して"新しい"ものになりえないという可能性が大です。

    つまり業界の競合からすると「バカな」と思わせる「非合理な戦い方」がその後の時代の変化の中で合理性、つまるところの最終顧客の価値を獲得していくということに繋がります。


    つまり、全てはまず、自分達のことを客観的に見れるかどうかに規定されるのです。


    OBT協会が提供しているもの


    然しながら、この種の能力は、個別性あるいは、具体性の高いいわゆるハウツー本やスキル研修や・ハウツー研修或いはフレームワーク研修等では培えないのです。


    そして、もう一つの問題は、視点の高い賢慮な人財が生まれ、新しいことを始めようと新たな戦略を考えても、現場では停滞感や疲弊感や多く上手く機能しないこともあります。その原因は、「計画と実行の分離」が影響していると考えます。


    具体的には、方針、戦略、経営施策等を考えて第一線に降ろした後は第一線の遂行状況と結果を管理・評価する側と、一方で、上から降りてきた、方針、戦略、経営施策等を遂行し成果に結実させなければならない側で、且つ管理され評価される側とに大きく分離されていることにあります。


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    我々は、ここに非常に大きな本質的な問題があると感じています。


    このような問題を解消するために、私どもが提供しているサービスを一言で申し上げると、
    「企業が抱える様々な経営課題や、業務課題そして組織課題等を第一線にいる人達や現場の人達にその解決策を見出させること、そして解決策を見出すためのプロセスを通して賢慮な人財の育成や人財のレベルアップを図る」この2つを同時に実現していくことです。


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    設計士(計画機能)は、図面を描けても、家を建てることはできません。

    しかし、大工(実行機能)は精密ではないですが、図面を描き、家を建てることができます。何故ならば、日々の経験の中で感覚的にわかっているからです。現場を体感でわかっている人間は、設計士ほど精密でなくても図面は、描くことができるからです。

    しかし、より確かな、より良い家を建てようとするのであれば、「設計士と大工」、「論理と経験」、さらに言うと「論理と志」の両方がないとダメなのです。


    事実として働いている人達の意欲、働いている人達のヤル気は、企業にとっては、設備機械等よりもはるかに高い、最大といえる生産性であり、これに勝るものはありません。


    本当に大事になることは「何故もっともっと考えなかったのだろうか」と悔しい思いをすることが無いように、後で「想定外であった」と苦しい言い訳をしないためにも、今、考え抜くことこそいわゆる「賢慮」なのかもしれません。


    皆さんも自分の会社を、今以上にいい方向に変えていくために、ぜひ深く考え、一歩歩きだして頂ければと思います。

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