OBT 人財マガジン

2010.02.24 : VOL86 UPDATED

人が育つを考察する

  • 風穴を開けるために

    今回の現場ドキュメントは、次世代のビジネスリーダーを養成するトレーニング
    のワンシーンからお届けします。対象者は管理職手前の中堅社員。

     

    トレーニングは計15回で行われ、今回ご紹介するのはその最終回。

     

    最終回では、新たな観点に気づき、学習しながら練り上げた、
    「自社の将来方向についての改革案」を経営陣に提言していきます。

     

    提言をする前、まずは参加者からこのトレーニングに参加してみての
    所感が述べられました。

     

    ・我々が動かなければ、何も変わらない。また、今の市況は我々に対して、
     変化を要求する情勢でもあるということを知った。
    ・アウトプットを導くプロセスはメンバーとの意見の戦いであり、
     その中で自分が本当に何をしたいのかが明確になった。
    ・学んだ内容を職場に戻って部下に伝え、部下もまた、意識が変わっていった。
     フォロワーが自発的に動けるようにする、それによって会社の質、レベルが上がる。
    ・今迄は「業務、業務」ばかりだった。
     経営的な視点から、自分の会社をどうしていきたいかを考えていなかった。
    ・ここ数年、仕事に対して緊張感が薄れていた。一番の学びは「甘え」を知ったこと。
     「甘え」をうまく断ち切ること、その大切さに気づいた。
    ・ビジネスに対する捉え方も変わったが「人としてどの様に生きていくべきなのか」を
     考える契機となった。

     

    回を追う度に感じていた事ではありましたが、
    参加者の様子はスタートした当初に比べて、随分違っていました。

     

    しかし、提言後、経営陣との質疑応答の段になると、
    全体的に、ややトーンダウンした様に感じました。
    前号の「経営人語」とも重なる内容でもありまずが、この様なケースは少なく

    ありません。

     

    この場を見ていて私は二つの事を感じました。

     

    ①提言を聞く側について
    ‐質疑で多かったのが(本題とやや離れた点も含めて)問い詰めるよう様な内容。
    重要度の高いテーマになればなるほど、案に対して慎重を期すことは
    不可欠だと思いますが、その一方で、提言する側の考え方や意識が
    以前と比べてどの様に変化しているのか、
    それが我が社に何を示唆しているのか、どの様な影響を与え得るか、
    という"背景"を、見極める観点も重要なのではないでしょうか。

     

    ②提言する側について
    ‐提言後、参加者から「質疑応答の中で、参加メンバーの総意を探ってしまった」
    とのコメントがありました。提言を導くまでのプロセスで、様々な経歴、部署を超えて
    「コンセンサスをとる」ことも重要な学習要素となります。
    しかし、本当に物事を為し得たい時、最終的に拠り所となるのは自らの見解。
    「意見がばらつくこと」だけに注意するのではなく、個々人がいかに自分なりの見解を展開するか、そのためにも、コンセンサスをいかに深いところでとるかが重要だと実感しました。

     

    今回の株式会社幸楽苑 新井田社長のインタビューでは"現場からトップまでオープンな経営""社員全体を巻き込んでいく動き"について語られていましたが、
    日々、企業様を御伺いすると、「○○はわかっていない...」「○○がこうだから...」
    という状況も少なくありません。

     

    厳しい現状を打破すべく、風穴を開けるためには、
    会社の将来方向を見渡し、見解を持てる人財を引き上げると共に、
    我が社全体の動きとして制約や規制を打ち破っていけるかどうかが、
    重要なのではないかと感じました。