OBT 人財マガジン

2006.08.23 : VOL6 UPDATED

経営人語

  • 【企業の衰退はどこから始まるか!】
    衰退につながる組織の劣化や腐敗を象徴する3つの現象

    ◆危機感の欠如


    業容が拡大し、組織が大きくなってくると組織が機能分化されて、組織の内部に様々なルールや決め事が作られていく。業務を進める上での手続きがやたら厳格に定められ、そうした手続きに精通し、齟齬なくことなすことやミスしないこと、失敗しないことが何よりも重要となっていく。
    独創性を発揮することも、より良い結論を導き出すことも求められない。
    そして、そうした根回しや利害調整といったことをスムースに出来ることが優秀さにつながる。
    そしてこうした様々なルールや決め事或いは仕組みや制度を維持することの方が、第一線の商売や顧客よりも大事であるという風潮や風土が自然と組織の中に出来上がっていく。


    結果的に、外よりも中、市場よりも内部、顧客よりも上司等といったように関心が、内部に向いてしまうために、次第に危機感は無くなり視野も狭くなってしまう。
    いわゆる大企業病といわれるものである。


    ◆天動説


    世の中が自分達を中心に回っているという表現である。
    例えば、最近不祥事を起こしている企業が多いが、その企業のトップは記者会見で必ず「知らなかった」と発言する。
    多分、彼は本当に知らなかったのであろう。
    然しながら、問題の本質は、大事な情報がトップに伝わらない、伝えないという閉鎖的な企業風土にある。
    このような企業のトップに限って「自分は社内のことを十分知っている」会社全体を理解できている」と考えている場合が非常に多い。
    然しながら、本当のところ実態はわかっていないのである。
    逆に、わかっているつもりになっているところに問題があるのである。
    ここではトップはまさに「裸の王様」に近い。


    これらの企業は、何も不祥事が勃発して衰退していくわけではなく、事件がおきる前からゆるやかに衰退の道を歩んでいる。
    要は、不祥事は単なる偶然ではないということである。
    "物理に臨界量の概念"という法則があるが、これは、企業経営にもまさに当てはまるのである。


    どこかの時点から、外から自分達を見ることが出来なくなってしまい、天動説に陥り、経営の軌道修正が出来ずに終わってしまうという例はことの他多い。

    天動説に陥らない唯一の方法は、「生きた外部情報に接し、耳の痛い話をしてくれる人、広い視点からものを言ってくれる外部人脈を豊富に持ち、アンテナを高くしておくことである」「お世辞ばかり言っている外部の人間なんて何の約にも立たない」にもかかわらず、苦言を呈する内外の人間は疎まれていく。


    多くの企業のトップにお会いして、この人は、アンテナの高い人であるかどうかは凡そ30分も話していれば大体わかる。
    要は自分で情報を集め、自分の頭で考えて、自分の言葉で語っているかどうか。


    ◆無責任構造


    企業規模が大きくなり、安定期に入ってくると大方の場合、組織内部のルールや制度等の運用(例えば、業績考課,昇格基準、或いは人事考課等)といったものが次第に甘くなってくる。 また、役員会を始めとする会議体ひとつとっても担当外のことにはその担当に対する遠慮が働き、そして専門知識も持っていないという理由で立ち入らない。


    組織の連帯責任というのは、往々にして無責任構造につながりがちである。
    無責任構造の具体例としては、「自分一人が言っても何も変わらない。いずれ誰かがやってくれるだろう」或いは「多分、何とかなるだろうという過度な楽観論」、このような現象を組織心理学では、「集団愚考並びに社会的手抜き」といっている。
    このような傾向は、歴史の長い企業程強い。


    企業や組織の無責任構造というのは、ガンと同様で時間と共に病状が進行してくる。
    皆、潜在的に悪いのは自分ではないと上から下まで思っている。
    上は下を、下は上を或いは部門同士も。要は、皆自分以外が悪いと思っているのである。
    この無責任構造の症状は、成熟期から衰退期に向かっている企業に非常に多く見受けられる現象である。


    最も大きな問題は、それなりの立場や役職にある人達が、本来やらなければならない仕事(会社の将来の在り方や事業戦略等)をせずに、自分達がやるべきでない仕事をただただ一生懸命にやっているというところに問題があるのである。


    このような状況を続けていると、後で振り返った時に「ただただ間違ったことを、一生懸命にやっていたに過ぎなかった」というような事例は、枚挙にいとまがないほどある。