OBT 人財マガジン

2006.09.10 : VOL7 UPDATED

経営人語

  • 【企業の衰退はどこから始まるか!】
    意思決定の先送りと自分達への甘さから衰退は始まる!

    ここ10数年程、どこに行っても、変革、改革と異口同音に言われているが、現実は非常に難しい。
    特に、古い企業や組織ほど、時代の転換期に文化や風土を変えることは、非常に難しい。
    本当は、手術が必要なのにバンドエイドを貼ったレベルで誤魔化している企業が多い。


    バンドエイドの小出しの例で思い出すのは、職業柄、さまざまな企業の方々とお会いする機会が多い中、特に企業によって随分違いがあるものだと感じるのが、意思決定に関する選択肢のことである。
    「やる」或いは「やらない」という意思決定や決断以外の第三の選択肢である「決断しないという決断をする」例えば、「もう少し検討して」「今は時期早尚、もう少し後で」「ウチのレベルでは、もう少しレベルが上がってから」等、要は決断の先送りである。


    これをやられるとがっかりするが、逆に言えばこの第三の選択肢を振りかざすことが彼らにとって、もっともリスクが少ないからである。反面、決断を先送りすることはリスクも先送りしているだけ。
    そうやっても会社が安泰だった時代はとっくの昔に終わったのでは?と思いたいのだが・・・
    今でも多く出くわす究極の決断である。


    その背景にあるものは、
    ●「これまでもうまくやってこれたから、これからもやっていける」という思い込み。
    ●「この慣れ親しんだ快適な環境を失いたくない」という思い入れ。
    ●「我々より状況をわかっている人間がいるわけはない。外の人間に何がわかるか」という思い上がり。


    論理ではなく、感情・感性が変革や改革を受け入れないのである。

    変革や改革という作業は論理ではなく「変えていかなければ生き残れない」というまさに「強い思いや意思そのものに大きく規定される」ということである。


    昨今、我々のところにもいろいろな企業から「 次代のボードメンバー候補を選抜して早期に育成することを支援して欲しい」という要請があるが、私はその時必ずお願いすることがある。 ボードメンバー候補の選抜に際しては、「志或いは思い」或いは「目線の高さ」で選抜してもらいたいという依頼である。


    頭は勉強させればある程度ついてくるものの、志や思いというのは、養成育成不可能な領域であるからである。
    志、思いが無い人は、経営とかマネジメントには向いていない。


    以前、箱根で行われた経営者セミナーで日産自動車を再生させたカルロスゴーン氏が、同社の経営苦境に至った最も大きな要因は何かという質問に対して最大の問題は、事業環境や外部要因にあるのでなく、苦境に至った本質的な問題は、日産の組織の内部にあった、ということを言われた。
    要は、「経営者がやるべきことをやっていなかった」ということである。


    日本の多くの経営者は、組織内部の問題については、過小評価する傾向がある。
    過小評価すればするほど病状が進行し問題が大きくなってしまい結果的に業績の低迷に行きつき手の打ちようがなくなってしまう。


    「企業組織というのは、外部環境によって崩壊するのではない。ダメになる時は決まって内部から崩壊が始まる」という極めて経営の本質的なことだが、経営の本質を忘れている企業が多いように思える。