OBT 人財マガジン

2006.11.29 : VOL12 UPDATED

経営人語

  • 【企業の衰退はどこから始まるか!】
    経営トップが裸の王様になってしまうと

    よく人間というのは、自分の見たい事実しか見ていないといわれるが、極めて当を得た言葉であろう。


    我々は、毎日、毎日膨大な情報に接しており、それをよどみなくてきぱきとさばいている。
    そして自分は仕事が早いと思い込んでいるトップやリーダーが多い。
    然しながら、てきぱきとさばけるのは、「好ましい情報か」「関心のある事柄か」を最初に振り分け、関心の無い話は始めから捨てている可能性が高い。
    自分にとって都合のいいものをも見て、都合のいい解釈をしているに過ぎないといえる。


    自分はどんなに理性的で客観的な判断をしているつもりでも、実際には好き嫌いをその土台にしているのである。
    面倒くさい話で、聞きたくない話でも敢えて耳を傾けることが出来る感性を、知性と呼ぶのかもしれない。
    知的レベルと人徳を兼ね備えたトップやリーダーは、みな聞き上手で、自分に都合の悪い情報を集め、その背景にある本質を考えていたといわれている。


    トップやリーダーになると、周囲が容易に悪い話はしてこなくなるというのが一般的である。 従って、どんなにシャープなトップやリーダーでも、自社や担当組織の現状を客観的に適確に把握できなくなり、その判断や意思決定を誤ってしまうということはことのほか多い。
    特に特定の取り巻き連中からの甘言は、非常に危険であり諫言が通らなくなってしまう。
    このようなトップやリーダーに限って「自分は社内の事を十分知っている」と思い込んでいる場合が非常に多い。
    トップやリーダーがこのような状況に陥っている企業の現場では、「ウチのトップ・幹部は、何もわかっていない」というような愚痴が飛び交うようになってくる。


    社員の持てる能力や力を十二分に引き出しつつ意欲を高めて、組織のパフォーマンスを最大限に発揮するためには、「情報の前に上下なし」という風土が非常に重要になってくる。 しかし、そのために最大の障害となるのが、階級とか権威の存在である。


    役割の上下はあっても、身分の上下関係は存在しないのである。


    「情報の前に上下なし」という風土を定着させるために、『全ての経営情報の公開』『誰でも情報の入手が可能』ということは勿論、権威主義につながることは極力取りやめるべきである。
    例えば、何階層にもわたって、捺印やサインを得る仕組み。


    一般社員が捺印し課長に提出、課長はまた捺印して部長に提出、部長は捺印して役員に提出。そしてその結果が役員から順順に下に降りていく。
    しかし、情報とは鮮度のあるうちに対処、処理しなければ意味がない。


    営業日報や各種の報告書も、「提出すること」が目的になってしまった場合、それらは本来の目的通りに活用されていない事が、多いのではないだろうか。