OBT 人財マガジン

2007.05.16 : VOL22 UPDATED

経営人語

  • 経営の本質は現場にある!

    人間というのは、誰でも非常に陥りやすいひとつの過ちを持っている。
    うわべの見える範囲、聞こえる範囲、或いは自分の過去の体験に基づいた価値判断の基準のみで動いてそれでやっていけると思ってしまう。
    自分はそれで正しいと思っていても客観的には間違っていることが非常に多い。
    それが間違いだったというのは、結果が悪い状況に遭遇して始めて我々はにそれに気づくのである。

    組織もまた然りである。
    組織は成功したと感じた途端に変革を阻む思考や行動に陥る。
    これがまさに内なる敵で変革の成功者が必ずはまる落とし穴である。
    成功した組織は一人よがりになりやすく、成功をもたらしたものを守ろうと保守的になりやすい。
    これはある意味で当然のことだし、短期的にも有利に働くことが多い。
    然しながら、長期的に見ると成功に導いた要因が今度は失敗の原因となる。

    世の中は全く先が見えない。例えば、今の地球の温暖化現象や少し前の米国で生じた同時多発テロ等を推測出来た人は誰もいない。

    先は見えないが然しながら、「時間は我々を待ってはくれない。間違いなく時間だけでは刻々と進んでいく」。

    従って経営とは、企業という船の進むべき方向を否応なしに右か左かを決めざるを得ない。
    その時の羅針盤は一体何か。すべからく自分であり、最後は自分の考え方だけである。
    考え方というのは生まれついてのものではなく、「小さいことでも当たり前とせず、何故と考える」要は「原因と結果を考える」ということである。
    何故、何故と考える癖をつけると一旦は忘れるけどまた必ずといっていいほど思い起こせるものである。
    普段は、心の中にずっとしみ込んで浸透しているがそれがある時、突如としてその状況に遭遇すると判断の源として有効に働くのである。
    これが判断力といわれるものである。

    優れた判断力は、自分の羅針盤で現場の体験に基づいていないと生まれてこない。
    判断力に優れている経営者ほど考えているといえるし、それは、まさに現場での積み重ねである。

    経営にも事業にも或いは生き方にも本質というものがある。
    地位があればどうとか、そういうものも何となくもみ消されてしまって肝心の本質が忘れられしまう。
    しかし、本当に大切なのはまさにこの本質にある。

    例えば、オフィスの広い部屋の真ん中に座って、そこから窓の外の景色を見ると、部屋が大きければ大きいほど外の景色は小さないっぺんにしか見えない。
    しかし、自分が席を窓の方に寄せていくと、次第に窓から外の景色が見えてくる。

    このように本質を知るためには、自らを本質が見える場に近づけていく必要がある。
    仕事をしている場、利益を生み出している場、生きている場というものは全てのものに通用する。

    場というのは、人間にとって生きるための知恵であり万能薬といえる。

    企業経営も全く同様である。

                           OBT協会 及川 昭