OBT 人財マガジン

2007.07.25 : VOL27 UPDATED

経営人語

  • 企業経営における全体観とは何か

    人間でも企業でも、ソロバン勘定に合わないことはやらず合うことだけをやる。
    それが普通の経営手法であり、最近の言葉でいえば、効率経営ということになる。

    然しながら、損得勘定というのは、現在までのことであって未来という意味では、それはあまりあてにならないことが多い。
    何故ならば、世の中やビジネスというのは、ソロバンで弾いた通りやってくるわけではないし、未来は、人生でも経営でも得てしてこちらが考えた通りにはやってこないというのが一般的である。

    今、効率的と思ったことが将来は、極端に非効率に変化することもありえるし、その反対に今の非効率が将来の効率に変化することも十分あり得る。
    世の中の全てのものが変化しており、現在進行形であって将来はどうなるかわからない。
    そもそも本当の意味で将来を予測するなんていうことは出来ないということである。

    商売でも全てが売り手にとって効率がいいように都合がよくなるようにやってはいるものの、その選択の結果はどうであろうか?

    全てが自分たちが思った通りの成果を上げられているかどうかということである。
    何か得で何が損かは理屈ではわからない。
    考えて見るとこちらにとって損であることは顧客にとっては得であるということもたくさんある。

    顧客満足といっても今世の中の企業で顧客満足を志向をしていない企業等見たことがない。
    ましてやサービス業や小売業となればそのことを標榜していない企業等はない。
    然しながら、現実はあることをすれば必ず、ある一定の成果が得られるという代物など世の中には存在しないのである。

    特にビジネスや商売というのは、そうはいかいなのである。
    こうすれば、こうなるという代物があれば誰もがその通りやってうまくいくはずである。経営不振になる企業等ないのである。
    全く同じことをやっても全ての企業がうまくいくわけではないのである。

    過去、現在、将来という時間において過去にあったものが現在あるわけではないし、現在あるものが全部将来にあるわけではない。
    過去は変化して現在となったのであり、現在も変化して未来になるのである。

    未来は過去や現在の延長線上にはないということは、誰もが知っているが、にもかかわらず、人は過去のデータを寄せ集めて将来を予測し将来について知ろうとする。
    その理由は「過去の事実の中に将来を予測するに足りる事例がある」と考えるからである。

    然しながら、過去のデータに基づいた理論がどんなに優れたものであっても所詮過去のものであり、どんな意味においても将来の事実を生み出すものではない。

    過去の事実、経験、データにこだわり、いくら熱心に調べても結局将来のことは誰にもわからないのである。

    それなのに大方のサービス業者や小売業者は、過去において成功した店舗を研究し、外装、レイアウト、品揃えや人の問題等過去の成功事例を集めて店舗の在り方を構想する。

    しかし、過去の成功事例を集めて理想の店舗を作ったとしてもその店が将来にわたって成功するとは限らない。

    何故ならば、時間と共に顧客も顧客ニーズも変化し店舗を取り巻く経済状況、社会状況も刻々と変化しているからである。

    将来はどんなに卓越した頭脳でもコンピュータでも予測することなんて出来ないのである。

    予測よりも経営を司る人達の"自社の将来をどうしたいと思っているのか"という経営の志そのものに規定されるのである。

    経営において必要となる全体観とはこのような考え方が出来るかどうかである。

                            OBT協会  及川 昭