OBT 人財マガジン

2007.10.10 : VOL32 UPDATED

経営人語

  • 時津風部屋事件と日本相撲協会の対応に学ぶ組織の内部統制の在り方!

    相撲の時津風部屋におけるけいこ中の死亡事故の問題が"稽古なのか制裁
    だったのか"ということで世間を揺るがせているが、それと共に相撲協会の
    隠蔽体質にもかなりの批判が浴びせられている。
    もし亡くなられた斉藤さんの死因が"稽古によるもの"ということで決着が
    つけられていたらと考えると空恐ろしさを感じざるを得ない。

    -隠すリスク-

    不祥事や失敗は大きな損害賠償に発展しかねない。
    これだけリスクがあるのだから、隠したくなるというのもある種の心理と
    しては理解できる。

    然しながら、今の時代、隠蔽は全く間尺にあわない。
    不祥事や失敗を隠そうと思っても隠しきれず白日のもとに晒されたとき
    失う信用は、極めて甚大である。
    この方がよっぽと大きなリスクがあるのである。
    百引く一はゼロというのが現代である。

    -不祥事を防ぐには-

    このようなことが生じるとすぐに法律を変え、制度を手直しをすべきで
    あるという主張が出てくる。

    これは一見、最もらしい話ではあるが、法律を変え、制度の手直しをしたから
    といって本当にこのようなことが根絶されるのだろうか。

    組織であれば悪しき社風、国であれば社会悪といったものが変貌しない限り
    決して無くなることはないであろう。

    悪しき組織風土、社会悪等を根絶するためには、家庭や学校での社会教育等
    による社会悪根絶の空気の醸成、企業組織であれば社会悪を容認しない社風
    の醸成等が極めて重要であって法律や制度を制定しシステムやマニュアルを
    作り文書化をする等ということでは全く防げない。

    組織においていかに内部統制システムを構築しても、経営者や社員等
    企業組織に関わる人たち全てが、内部統制システムの構築・運用が
    我が社の成長・発展につながるということの意味を十分理解していなければ、
    全く成果を上げ得ない。

    -企業は内部の人間以上のものにはなり得ない-

    一国の政治のレベルとは、その国の国民の考え方や行動を反映した
    ものであり、国民全体の質がその国の政治の質を決定するのと同様に、
    企業組織における活動も経営者や社員の意識の反映にほかならない。
    企業の競争力や価値は、その企業の経営者や社員の質によって
    決定されるのである。

    社会悪や悪しき組織風土の価値観とは"赤信号皆で渡れば怖くない"、
    皆で違法なことをすれば違法なことをしているということを忘れるという
    感覚であろう。談合等はその典型といえる。
    また、皆で隠そうという組織の中の約束は必ず反故になる。
    何故ならば、そのうち必ず内部告発者が出るからである。

    繰り返すが、組織にとって隠すのは損であり、10倍返しとなろう。

    組織は社会を欺いた時転落していく。
    少しでも信用を失うと落ちるスピードは想像を絶する。

    この当たり前のことが転落していく組織、順調な組織のいずれにも
    原点といえる。

    私は、本来、内部統制に関する法律等が必要なのかどうか、大いに疑問が
    残るところである。
    企業組織を運営するに際して、きちんとした運営体制を敷いていれば、
    それそのものが立派な内部統制システムといえるからである。

    つまり、本質的なことは、その組織を構成するリーダーから全てのメンバーに
    至るまで一人一人が"自らをどう律するか"ということにかかっている。
    人格を向上させるような組織風土や社風を作り上げることの方が組織と
    人間の永続的な成長を約束してくれるのではないだろうか。

    今回の「時津風部屋の事件と日本相撲協会の対応」を単なる芸能、
    スポーツネタとしてではなく、現代の日本の社会と多くの企業組織に内在
    している問題として捉えるところから学習の全てが始まるのではないだろうか。

            OBT協会 及川 昭