OBT 人財マガジン

2009.05.13 : VOL67 UPDATED

経営人語

  • ビジネスに学歴は必要か!

    新入社員のセミナーが終わり、各企業は来年度の新卒者採用の検討に入っているが、
    この採用に対する考え方は企業によって相当な違いが見受けられる。

     

    ビジネスマンとしての優劣は、出身校即ち学歴に規定されるという考え方に偏向している企業や採用担当者は未だかなり多い。

     

    率直に申し上げると、この種の企業や担当者に限って現実のビジネス社会では、
    全くといっていいほど存在価値がない場合が多い。
    推測するにこの存在価値の薄さが本質ではない、次元の低いテーマに対するこだわりとなって働いているのであろう。

     

    ビジネスという世界に本当のところ学歴はどの程度有効なのであろうか?

    誰か検証したことがあるのだろうか?

    学歴社会は完全に崩壊したと言われているが、未だに「学歴差別」は採用・昇進などで露骨に行われているようである。

     

    学歴で人を判断するのは、かってはかなり先進的なことだったようである。
    そもそもこの習慣は、中国で皇帝に仕える官僚候補者に古典の試験を課したことに始まるようだが
    これは同時に財力のテストでもあったらしい。

     

    何故ならば、試験に必要な知識は非常に専門的で、合格するためには何年も学習が必要となり、
    これはかなりコストがかさむことであったらしい。
    このような、中国の登用システムは非常に進歩的だった。
    ヨーロッパでは19世紀になってようやく正式に官庁試験が導入されたが、
    それもこのような中国の先例に影響されていたようだ

     

    然しながら、高い学歴を誇っていても、社会人になってから勉強を怠り、進化するどころか退化している人はことのほか多い。
    逆に数年前とは見違えるほど立派になっている人もいる。
    従って、学歴が現在の力を必ずしも証明しているとは言えないのである。
    勿論、教養としては意味はあるがそれがビジネスの世界で決定的かというと全く違うということである。

     

    例えば、松下幸之助氏が健在だった頃、松下電器社内で学歴の話はあまりされることはなかったという。
    そのような話が幸之助氏の耳に入れば激怒したという。
    それは、ご自身が小学校もろくに卒業していないという学歴コンプレックスからではない。
    そのような次元の低い話ではなく、「商売は学歴で事が済むほど甘いものではない。
    商売を甘く見るのもほどほどにしろ」と幸之助氏は言いたかったのではないだろうか。

     

    実際、同社には高卒の事業部長もいたし、三代目社長の山下俊彦氏も大学は出ていなかったが、
    1977(昭和52)年から9年間、改革に力を振るった。
    同社長の時代から松下電器の改革が始まったと言えよう。

     

     また、小型モーターで約70%のシェアを持つ永守重信社長率いる日本電産では、
    学校の成績や学歴はまったくと言っていいほど評価の対象にしていない。
    たとえば大卒を例にすると、新入社員が入社して来ると、全員の卒業証書と成績証明書を金庫に入れる。

    そして5年後に取り出し、仕事の実績と照らし合わせてみる。永守氏曰く「ほぼ確定的な事実が明らかになった」と言う。
    「知能の差は、せいぜい2,3倍ぐらい。しかし、仕事に情熱を燃やすやる気のある人とない人では、
    100倍、場合によっては1000倍くらいの差がつく。つまり、本当にやる気のある人は数年で大きく成長します。頭のいい人よりも、意識の高い人が多ければ多いほど会杜は成長するのです。入社5年後に、卒業した大学と実績の関係を比較してみると、まったく関係がありません」

     

    更に、ユニチャームの創業者である高原慶一朗(会長兼CED)氏も著者『賢い人ほど失敗する』(PHP研究所)で次のように述べている。
    賢い人が失敗するときは、その賢さゆえであることが世間には多い。
    賢い人は先が見え、効率の要諦が見抜けるので最短距離を行くことができます。
    でもその結果、中身を濃くすることよりも、手際や歩留まりのほうを優先させてしまいがちです。
    簡単な仕事だからと、つい手を抜いて、世間の信用を失ってしまうこともあります。
    そこへいくと愚直な人は、目の前のことに一心不乱になります。全身全霊打ち込んで精進します。
    いかにも要領が悪く、遠回りも多いのですが、自分の持てる力、知恵を惜しげもなく注ぎ込んで倦みません。

    それがその人を成功に近づけます。

     

    今回のコラムでは、学歴について言及したのは、筆者も個人的には、「学歴主義」には極めて否定的である。

     

    日々の仕事の積み重ね、かけた時間と同じ見返りしかないのが現実のピジネスの世界であるということは歴然とした事実である。

     

    学歴や新入社員の卒業大学に関する妄想や次元の低い話を話題にしている時間があるのであれば、

    "学校で勉強したことは世の中ではほとんど役に立たない""知っているということと実際にやれるということは違う"等等
    "わかっているつもりになっていることのリスク"を若いうちから理解させるような指導が企業として重要なのではないだろうか。

     

    自社への入り口資格として新入社員に対して、"仕事とは""仕事を通して成長するということ"
    "仕事に対する考え方"等を早期にきちんと教育することの方が本物の人財として育つ、育てるというところにつながるものと思われる。