OBT 人財マガジン

2010.12.22 : VOL106 UPDATED

経営人語

  • 「もしも高校野球の女子マネジャーがドラッカーを読んで・・・・・・」が示唆するもの

    2010年も残すところあとわずかになってしまった。

    振り返ってみると、世界的な経済危機から2年経ち残念ながら期待されていたような景
    気の回復には至らずとりわけ、日本経済の浮上の目途は全く見えず世界の中での相対
    的な地位の低下も顕著で将来への雲行きは暗い。

    これから先の状況は、恐らくこれまで経験したことの無いような厳しい状況に陥る可能性
    はかなり高いのではないだろうか。

    日本は依然、ハードを売る経営にこだわり、そのために最近の日本企業は単品商売で
    終わってしまっているように思える。
    例えば、家電製品でも、インターネット等のインフラがあって初めて成り立つのに、木ば
    かり見て商品の先にある森を見ることがなかった。
    そして、アップルやサムスンにお株を奪われている。

    例えば、自動車も然り。
    日本の自動車大手は、車を売ることだけに満足して環境や渋滞、駐車場問題等買い手
    の目線に合わせてどれだけ真剣に取り組んできただろうか?
    もし、取り組んでいたならば、若者の車離れは起こったのだろうか?
    今でも車でしか得られない経験はたくさんある。
    それが何なのかを冷静に分析し、もっといい形で提供する方法を考えないと自動車産業
    もいつか死んでしまう。

    グーグルもアップルも成功したのは経営、日本にはどちらかというと経営はなく技術であ
    ろう。

    グローバルな志向を欠き、単純なものづくりでは中国や韓国に勝ち目がなく、その先の
    付加価値も世界に売る経営モデルを作れるかどうかにかかる。

    少子化でかつてのような高度成長を前提とした設備投資や労働力投入が難しい日本で
    は、まさにイノベーションが必要となるのではないだろうか。
    それは技術の領域だけにとどまらず、視点や考え方、価値観等のイノベーションが無い
    とこの先望めない。

    イノベーションといえば、100万部を超えるヒットとなった、都立高校の弱小野球部の女
    子マネジャーがドラッカーの『マネジメント』に出会い、甲子園を目指すというストーリー
    の小説である。
    経営学のノウハウを高校野球に生かして、マーケティングとイノベーションを実現していく
    というものである。

    その中で、主人公の女子マネジャーが取り組んだイノべ-ションとは、
    ・野球部員の走力を向上させるために、陸上部との合同練習を行う。
    ・陸上部の選手は野球部員に教えることによって自分自身のフォームを矯正して自分自
     身のタイムも良くなっていく。
    ・柔道部にピッチャーを送り込んで畳の上で下半身の鍛錬を行う。
    ・吹奏楽部に試合用の応援歌のアレンジを依頼する。
    ・地域の子供たちの為に野球教室を開催する。子供に教えるというプロセスの中で部員
     自身が学習する。

    野球選手としての走力を鍛えるというトレーニングを従来とは全く異なるやり方で達成す
    るというものであり、まさに「創造と破壊」で有名な経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの
    主張である「組み合わせ」「新結合」につながるアプローチといえよう。

    日本経済の浮上も新しい経営モデルの再構築にも、そのプロセスでは、これまで経験し
    たことのない厳しい状況に直面することが想定される。

    そのためには、
    「これまでの視点や考え方」と「他者へ責任を転嫁する姿勢」例えば、政治家の無能さ、
    経営者が近視眼的、官僚は悪等といった姿勢にイノベーションを起こすことが不可欠で
    あろう。

    再構築の実効をあげるためには、この混乱と混迷をもたらした責任は、我々一人一人の
    選択の結果にあるという自己責任性が強く望まれるのではないだろうか。

    再構築の全てはそこからしか始まらないであろう。

    来るべき2011年は、ぜひそのように年にしたいものである。