OBT 人財マガジン

2012.08.08 : VOL145 UPDATED

経営人語

  • 何のための経営や事業か?

    私は、"効率"というものに対して非常に疑問を感じている。

    これまでも、現在も「いかに効率よく経営を行って利益を上げ拡大していくか」がずっと経営や
    事業の判断軸となってきた。

    これは決して日本に限らず世界中にいえることであろうが、そうすると経営や事業は、
    効率よく利益を上げることだけなのかということになる。

    このような意見を述べると"経営をわかってない""ビジネスをわかっていない"人間の話として
    現実のビジネスの社会では、青臭い書生論と片付けられてきた。

    効率にも、営業効率、生産効率、事業効率、経営効率等様々あるが、要はいずれもインプットを
    少なくしてアウトプットをいかに大きくするかということだが、確かに、効率というのは、何かを判断
    する時の尺度のひとつではあるが、それが果たして絶対なのかということを考える必要がある。

    各種の効率を売り物にして商売しているコンサルタントのアドバイスに飛びついて様々な施策を
    講じている経営者が非常に多いが、私にはこの種の人達はさして利口とは思えない。

    考えて見れば、経済性とか効率性なんて話は、事業に携わる人間、いわゆるプロであれば
    当たり前の話であってそんなことに問題があるようでは極めて恥ずかしい話である。

    経営でも企業でも効率は良くないけれど、全体的に見れば意味があるものとか、非常に重要で
    あるというものがたくさん存在し、それを判断出来るのが本当のプロであろう。
    要は、評価軸をどこにおくか、光をどこに当てるのかということである。
    ものごとは全て裏表の関係にあるから、一方のみを過度に追及していくと当然のことながら、
    もう一方はどんどん弱体化していってしまう。

    例えば、人を育てる、人財育成といった領域はその代表的なものであろう。
    人財を育成するという活動は、効率や生産性という概念で捉えるべきものでは決してない。

    この種のものに効率性や生産性を求める人達が、物事の本質や真理を理解出来るとは
    とても言い難い。

    かなり前から、日本の企業社会では、効率や標準化、或いは前年比等といった極めて単一の
    尺度での見方しかしなくなったというか、出来なくなってしまった。
    そして、それからもうかなり時間が経ってしまった。
    その時間的経過の中で我々は、実に多くのものを失ってしまったと思う。

    経営や事業というのは、何故この事業をやるのか、この事業をやって何を実現しようとするのか
    といったそれなりの世界観、事業観、経営観そういうものを持った上でそれとリンクさせながら、
    事業を構想し、組み立て、経営をやっていくそういうことが強く求められているし、これから先は
    尚一層必要となるであろう。

    例えば、イニシャルコストや先行投資はかなり要しても、効率やスピードの点では問題が
    あっても"人の幸福につながるもの"は長期的に見た場合、必ずや顧客の支持が得られ利益に
    つながるのである。

    何故ならば、どんな経営でも、いかなる事業でも、つまるところ人間のためにやっているわけで
    あって単なる金儲けのためにやっているわけではないからである。

    我々は、前年より売上、利益を稼ぐために人間をやっているわけではない。
    我々は、標準化して効率を上げるために、多くの顧客にたくさんの商品を拡販するために
    人間をやっているわけではない。

    全ては、人を幸福にするためにいろいろな商品や技術を開発しているわけで、それを忘れては
    ならないと思う。

    経営も戦略もマーケッティングもものづくりも突き詰めたら全てそこに行きつくのではないだろうか。
    それが物事の本質だからである。

    我々は、イノベーションというと何かとんでもない特別の世界と考えがちであるが、本質的には
    全て人間が原点である。

    事業というのは、理念や哲学、或いは理想とかといった世界とは本当に別世界のものなのだろうか?

    いや決してそうではないはずである。

    理念も哲学も理想も無いのに、効率や標準化、また前年対比等がただ1人歩きしてその物差し
    だけを使って一体どこに行こうとしているのだろうか?
    何を実現しようとしているのだろうか?
    全く理解に苦しむ。
    ただ、現場に閉塞感や疲弊感をもたらし組織が停滞していくだけにもかかわらず・・・・・。

    もうこのようなひもじい考え方からそろそろ卒業すべきではないだろうか。

    本当の経営や事業のプロというのは、このようなことがわかるかどうかであろう。

    On the Business Training 協会  及川 昭