OBT 「経営課題」と「人財に関わる課題」の同時解決

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2016.02.05 : UPDATED

企業風土・組織体質の脆弱化を防ぐために


私は、この仕事に就いてから概ね20年。
その間、様々な業界のたくさんの企業に関わってきて、いろいろな企業の栄枯盛衰を見てきた。


同じ業界で同じような時期にスタートし、始めの内は大同小異であるものの、
しかしながら、ある時間を経過すると大きな格差がついてしまい、
同じ業界にいても日本を代表する企業になったところもあれば、
駄目になって衰退していった企業もたくさんある。


事実として、「1950年度の日本の製造業の売上高ランキング」によると、
1位は東洋紡績、以下八幡製鉄、富士製鉄、鐘淵紡績、三井鉱山と続く。
上位50社の業種構成は、繊維14社、鉱山9社、化学6社、鉄鋼5社、食品4社等で、
それから60年経過した現在、この50社の内の約45%が合併や倒産に至り、
今も当時の社名のまま存在している企業28社にとどまるといわれている。


注目すべきは、業界が同じでも企業の成長力は大きく異なるということである。
これは、企業や組織の衰退というのは、外部環境のみに左右されるわけではなく、
外部環境への適応を妨げる組織そのものに本質的な要因があるという証左であろう。


先日、産学協同の某研究会(経営組織研究会)で
企業の衰退や経営危機に至る現象に驚くほどの共通点があるという話になった。


20130807_01.JPG


会社組織というのは、組織年齢の増加に伴って病理的な状況に陥りやすく、
組織の加齢と企業風土の健全性には何かしらの因果関係があるということである。
簡単に言えば、「企業風土は、創業から年数が経ち規模が大きくなっていくにつれて、
次第に脆弱化していく傾向にある」ことは間違いない。


風土の脆弱化というのは、表面にあらわれる断片的な部分であるために、
どうしても些細なこととして捉えられがちである。


然しながら、経営や組織運営というのは、些細なことの積み重ねである。
些細なことをそのまま放置しておくことは、単に風土の脆弱化を蓄積しているのに等しい。
例えば、「部屋の中は自然に散らかっていくが、自然に片付くことは無く人間が意識的に
行動することでしかきれいにならない」ということと同様である。


風土の脆弱化を表す現象的な些細なこととは、以下の様なものがある。


20130807_02.JPG


社内で隅々にその組織の体質と抱えている問題点が現れるのである。
そうして風土は次第に脆弱化していき活力を失っていく。


風土の脆弱化は、時間の経過と共に全ての組織に必然的に発生する自然の理であり、
脆弱化を回避するためには、絶えざる改革を続けることが必要なのである。


以前、箱根で行われた経営者セミナーでカルロスゴーン氏は、
日産自動車が経営苦境に至った最も大きな要因は何かという質問に対して、
最大の問題は、事業環境や外部要因にあるのでなく、苦境に至った本質的な問題を、
日産の組織の内部にあった他責文化にあると指摘している。
「日本の多くの経営者は、組織内部の問題については、過小評価する傾向がある。
過小評価すればするほど病状が進行し問題が大きくなってしまい、
手の打ちようがなくなってしまう」。


また、セブンイレブンの鈴木会長も「企業というのは、外部環境によって崩壊するのでない。
ダメになる時は決まって企業の内部から崩壊が始まる」と言っておられるが
極めて本質を仰っておられると思う。


風土の脆弱化を表す象徴的な現象として、大きくは三つの点が考えられるが、
今回の記事では、その内の二つを紹介する。



    1.危機感の欠如

業容が拡大し、組織が大きくなってくると組織が機能分化されて、
組織の内部に様々なルールや決め事が作られていく。


業務を進める上での手続きがやたら厳格に定められ、そうすると、そうした手続きに精通し、
齟齬なくそれをこなすことやミスしないこと、失敗しないことが何よりも重要となっていく。
そして、こうした様々なルールや決め事、或いは仕組みそして制度を維持することの方が、
第一線の商売や顧客よりも大事であるという風潮や風土が自然と組織の中に出来上がっていく。


結果的に、外よりも中、市場よりも内部、顧客よりも上司等といったように
関心が内部に向いてしまうために、次第に危機感は無くなり視野も狭くなってしまう。
いわゆる大企業病といわれるものである。
「顧客志向」から「社内志向」へという流れである。
そして頭の中にあるのは、自社のこと、さらにいえば自組織だけのことになってしまう。



    2.天動説

世の中が自分達を中心に回っているという表現である。
例えば、最近不祥事を起こしている企業は多いが、
その企業のトップは記者会見で必ず「知らなかった」と発言する。
多分、彼は本当に知らなかったのであろう。


然しながら、問題の本質は、
大事な情報がトップに伝わらない、伝えないという閉鎖的な企業風土にある。


このような企業のトップに限って日常は「自分は社内のことを十分知っている」、
「会社全体を理解できている」と考えている場合が非常に多い。
然しながら、本当のところ実態は何もわかっていないのである。


逆に、わかっているつもりになっているところに問題がある。
これらの企業は、何も不祥事が勃発して衰退していくわけではなく、
事件が起きる前からゆるやかに衰退の道を歩んでいる。
要は、「不祥事は単なる偶然ではない」ということである。
起こるべくして起こったということである。


このような企業では、経営トップだけでなくマネジャークラスや若手も含めて
"わかっているつもり"になっている人たちが非常に多い。


看板やブランドに依存して仕事をしていることを忘れて勘違いしている社員が増加する。
自分の能力やレベル、そして立ち位置を客観的に捉える事が出来ず、
すべて自分の視点でしか捉えられない。これは人間にも、組織にも言える。


そしてどこかの時点から、外から自分達を見ることが出来なくなってしまい、
天動説に陥り、経営の軌道修正が出来ずに衰退していくという例はことの他多い。


天動説に陥らない唯一の方法は、
「生きた外部情報に接し、耳の痛い話をしてくれる人、
広い視点からものを言ってくれる外部人脈を豊富に持ち、アンテナを高くしておくことである」。
「お世辞ばかり言っている外部の人間なんて何の役にも立たない」。



*続きはこちらでどうぞ。
  企業の本質は「組織の実態」にある



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保てるかどうかが、企業の成長を決める


社内の都合ではなく、顧客の論理に
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