OBT 人財マガジン

2007.04.10 : VOL20 UPDATED

人が育つを考察する

  • 予算化された人件費管理で業績連動型へ①

    「総額人件費管理の徹底」と言われて久しい。
    2007年の春季労使交渉は、主要企業の速報結果(日本経済新聞3/29)によると賃上げ率(月例給与の上昇率)は前年比0.04ポイント高い1.83%となっており、3年連続で前年を上回った。
    また、年間一時金(ボーナス)では平均支給額が同3.63%増えた。
    その結果、今春の労使交渉では自動車など大手企業のほか、中堅・中小企業でも賃上げが実現しており、賃金の上昇傾向が鮮明になってきた。

    これまで、総額人件費管理に関しては、賃上げを抑制する時代にその必要性が求められていたが、賃上げやベアが行われた時機こそ、検討すべき課題である。
    加えて、総額人件費管理の概念や理解にバラツキがあり、実際にどのような取組みがなされているかも意外に知られていないのが実情である。
    そもそも「総額人件費管理」とは何か、現実にどのような手法があるのか、あるいは総額人件費管理を実践する上での阻害要因など、この機会に、企業経営における、総額人件費のあり方を考えてみよう。

    現在、多くの企業では「予算制度」が導入され、年度予算が立てられている。
    上場企業は当然のこと、中小企業でも予算は大切なものである。
    特にキャッシュフロー経営(キャッシュの最大化を意思決定の基準とする経営)の浸透に伴い、多くの企業で予算の重要性は増している。
    予算をベースに行われる企業活動では、まず売り上げ目標・見込みを立て、その目標を達成するため必要なリソースを試算し、人件費、調達費、販売活動費などの必要経費を算出する。
    こうして算出された「必要経費」が部門ごとの予算となり、企業はこの予算の枠内で事業を遂行していくことになる。

    特に人件費は、人事部が一括で管理するケースや、各事業部署に割り振られるケースなどさまざまであるが、人件費予算によってその企業が1年間に社員に支給できる給与総額や1年間に採用できる人数は決まっていく。
    しかし、この人件費予算は果たして適正なのだろうか?
    人件費予算を、組むためには少なくとも必要人員計画が必要である。
    一般的に、企業は正社員、パートタイマー、アルバイターなどを雇用している。
    ちなみに、1日50人が働くスーパマーケットでは、年間に350日営業すると、1年に必要な総労働量は17500人日(人日:ある業務を行う際に1日あたりに必要な人数)
    1日1人が8時間勤務するとすれば14万人時(時間:ある業務を行う際に1時間あたりに必要な人数)となる。
    年間総労働量から正社員が行う業務量を除いた不足分をパートタイマーやアルバイターが補う必要がある。
    しかし、そもそもの年間総労働量の計算は複雑である。
    その複雑な計算をきちんと行って、人件費予算は策定されているのだろうか?


    On the Business Training 協会  栗田 猛


    *続きは後編でどうぞ。
      予算化された人件費管理で業績連動型へ②