OBT 「経営課題」と「人財に関わる課題」の同時解決

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2016.02.05 : UPDATED

「経営施策の浸透・実効に向けて施策の作り手側に求められること」



今回の「Opinion」では、前回ご紹介した「経営施策が浸透しない、実効が上がらない」状況を
生み出す「6つの要因」の内、以下の2つに焦点を当てる。

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    1.経営施策、即ち、経営方針、戦略や制度、仕組み等を作り出すプロセス


まずひとつの問題は、経営方針でも戦略でも制度でも、
経営施策類を考え出す人達は、
①「その手のものをきちんと作れば、整備すれば、組織の成果が上がるはず」
「組織全体のパフォーマンスが向上するはず」という前提に立っている。

そのために、実効が上がらないと、成果が出ないと
「ウチの現場は駄目だ」「やる気の問題」「実行力が弱い」と実行部隊を責める。

しかし本来経営施策、例えば戦略でも制度でも仕組みでも、
将来や先行きに向けての絵にしかすぎない。
それは、未来のガイドラインではあったとしても未来を規定するものではない。
何の検証もない論理や理屈の世界の話なのである。

そのため、実行段階になるとその通りには運ばないというのが一般的である。

従って、作り出すプロセスというのは、
「立案→修正→実行までの一連の流れを包含したプロセスである」と
定義しなければならない。

②そもそも経営方針や戦略・制度を作れば、後は実施するだけという
方針や戦略、制度・仕組み等はそもそもあり得ないということである。


    2.経営施策、即ち、経営方針、戦略や制度、仕組み等を
    実行する側である現場側に理解させるプロセス

経営方針や戦略の実行段階になると、
「現場は何度説明してもわからない」「管理者が下にやらせきれない」
といった問題が必ず提起される。

そこには
「戦略=トップや本社の仕事」「実行=現場の仕事」という見方が
厳として存在し、「トップや本社の言っていることは正しいのだから、
現場はそれをきちんと理解して実行しなさい」という前提がある。

そのくせ、現場が言われた通りにやると、
「言われた通りのことしかできない」と文句も出たりする。

一方で、現場に説明すると、「わかった、わかりました」とは言うが、
実際には「わかっていない」こともどれほど多いことか。

多くの人間と新しいものを共有する場合、特に経営施策を作るという
プロセスに関わってない現場の人達に理解してもらうためには、
相手に理解して欲しいことを何度も何度も繰り返して言う、繰り返し訴える。

もうひとつ、人間には、みんな感情があって、
それが行動に大きく影響を及ぼすことは理屈ではなく現実なのである。

「何故、営業のやり方を変えなければならないのか」、
「何故、これだけコストを削減する必要があるのか」等といった問いに、
「これはこうである」と論理的に説明することは可能である。
極端に言えば、論理的な説明や理由等はいくらでも作ることが出来る。

然しながら、実行する現場の人達は本当にそれを欲しいのだろうか?
「腑に落ちる」ということは、必ずしも論理が素晴らしいのではなく、
作り手や説明者側の気持ちがわかるということである。
「納得する」というのは気持ち・感情によるところがとても大きい。

例えば、聞いている側から「もっと詳細に説明してほしい」
「納得いかない」といった意見が出る場合、
その背景には、表現こそ変えてはいるものの、
「私は、あなたのことを信用していない」と言っているに等しい。
このような場合、どんなことを説明しても
なかなか納得してもらえないであろう。

大切なことは、
100%合意は出来なくても、ひとつの方向でやってみようと
関係する人達が「納得」できるかどうかである。

そのためには、作り手や説明者側と実行する側の人達との間に、
きちんと「意味の共有」がなされるということが最も重要なのである。


「意味の共有」がなされるためには、次の3つの小さいことが大切になってくる。

①説明する側が手間をかけること

効率的に伝えようとすると、
電子掲示板、メール、DVDを配布、VTR或いはTV会議や
コンファレンスコール(電話会議)等という形になる。

これは、情報は伝わるが、「意味の共有化」に関しては何の保証も無い。

何故ならば、
「意味を共有」するためには言葉以上のものが必要となる。

例えば、言葉の意味というのは何通りにも解釈できるからである。
「緊急」という言葉でも、人によって理解は様々である。

会議や打ち合わせ等コミュニケーションに時間がとられて
仕事が出来ないといった話をするビジネスマンが現実、非常に多い。

そうすると、出来るだけコミュニケーションを効率化しようという発想となり、指示はメール、
全国に散らばる営業マン会議も集まる回数を極力減らす。
そのため、「意味の共有」のところがすっ飛ばされて、即「各論」から入り、
話が噛み合わず、論点があっちへ行ったりこっちへ行ったりして
会議が迷走する場合も多い。

こうした考え方の前提には、   コミュニケーションの効果        
                            コミュニケーションコスト

要は、分母であるコストが下がれば下がるほど効率的であるという発想。

本来は分子の効果こそ上げなければならないのに、
分母のコストばかりを下げようとするので、
結果として分子も下がってしまい、実は何も変わらない。
場合によっては以前より悪くなってしまっている場合も多い。

例えば、セブンイレブンが2週間に一度、
フィールドにいるカウンセラー2000人をわざわざ集めて
全体会議をするのは、それだけコストと手間暇をかけないと
なかなか「意味の共有」が出来ないということをわかっているからである。

本部の指示が個店(現場)レベルで実施される比率は、
セブンが他のコンビニや流通チェーンに比べると格段に高いといわれている。
こう考えると、セブンイレブンが莫大なコストをかけて
コミュニケーションの場を作っている理由も容易に理解出来る。

結局、「意味を共有する」ためのコミュニケーションは、
そんなに効率的にはいかない、出来ないということである。

もうひとつ、説明する側が注意しなければならないことに、
「知識の呪い」と言われるものがある。

説明する側は、その説明する施策に関しての背景や様々な知識等を
良く知っているために、無意識に説明を受ける相手側も
そういうことは知っているだろう、わかっているだろうという前提で
話をしたり説明したりしがちである。
よくいわれる温度差とは、こうした「知識の呪い」からくるものである。

だからこそもう少し手間をかけて、
そうした背景まで伝えていかないといけない。

情報流しただけで会議を開いて
説明しただけで相手が理解したつもりにならないことである。


②もう少し聞くこと

本当に意味を共有するためには、
相手側の考え方や状況を知らなければならない。

例えば、実行する現場の人達が、その案件に対して意見を言う機会があり、
作り手側にきちんと聞いてもらえたと実感すれば、
結果としてその意見が通らなくても納得し、
最終決定に従いやすいのである。

人間というのは、自分の意見が通らず、
むしろ自分が反対している意見が最終的に取り上げられたとしても、
自分がその議論に参加していた場合と、参加していなかった場合を比較すると、
議論に参加している方がより最終案に対して
一生懸命取り組むものであるということは、
いろいろな研究でも実証されている。

また、人の上に立つ人間は
「全て自分の責任であると思うこと」が必須の資質である。

わかっていないと現場を非難することは簡単であるが、
「相手がわかるように本当に話しているだろうか」と自問することである。

会話しているといいながらも、
実際は自分達の価値観を相手に押し付けているだけの場合が多い。
意見を聞くのは、相手のことを理解するためではなく、
相手に反論しているだけというケースも多い。


③小さな行動は大きな言葉よりも能弁であること

経営施策を作る側は、言葉でどんな素晴らしいことを言っても
行動が伴わなければ意味が無い。
要は、言行が一致しないことである。

大事なことは、作る側・説明する側が
新しい施策や戦略に則った言行をとっているかどうか
ということである。



今回の「opinion」に関連する事例・知見


経営施策を実際に動かす社員への「思い」なくして、その浸透や実効は望むことはできない。


企画側が作るべきは「ルール」ではなく、現場が主体的に創意工夫する「環境」である。


標準化の呪縛から解き放たれる時代の到来!


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